ペットを家族の一員とする世帯の増大

高齢者にとどまらず現役世代の単身者もペットと暮らす人が増加している。孤立感を解消したい思惑もあるようだ。毎日の日課である犬との散歩で、見知らぬ人からも声をかけられたりして、社会とのつながりを実感できる良さもある。ましてや飼い主同士がペットを散歩させることで日々顔を合わせるようになると、いわゆるペット友人となり、お互いに健康などを気遣う仲にまで発展したりする。

毎日ペットの世話をするということから責任感と生きがいが生まれ、たとえ後ろ向きな考えや感情に襲われても、脇に追いやることが可能となるプラス面もある。

ペットはかわいいというだけでなく、何があっても常に飼い主に愛情を降り注いでくれる優しさがある。無条件に無批判に愛情を傾けてくれる姿に、孤立感や不安感も消え去り、ふさぎ込む気持ちも和らげてくれる。ペットはもはや動物ではなく、家族の一員といえる。

家族だから、自分が食べているものと大差ない食べ物を与えようとし、質の高いペットフードを与える。オーダーメードの衣服を身に着けさせたり、アクセサリーまでも購入したりする。2022年12月の一般社団法人ペットフード協会の発表では、ペットの月間平均支出額は、犬が1万4000円弱で猫は7000円強だ。

アメリカなどでは、家族としてのペットを職場に連れてくることを容認するオフィスビルがあったり、ドッグランの施設があるマンションも存在するそうだ。飼育するペットが死亡した場合には、1~3日程度の有給休暇を与える企業もある。ペットロスによる事故や業務上のミスを防ぐ効果を認識してのことだ。ペットの飼い主を“pet owner”と呼ばないで“pet parent”と呼ぶ。いまやペットは家族そのものだ。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。