問われる運用実態の中身。信託期間や運用体制、情報開示は?

このESG関連公募投資信託を巡る状況レポートは、昨年10月末時点で37の投資信託会社が設定・運用している225本のESG関連ファンドを調査した結果です。償還期限までの期間別割合で見ると、5年以下が23本で10%、10年以下が60本で27%を占めました。ESG関連ファンド全体の37%が10年以下で信託期限を迎えるというのは違和感を感じます。

そもそもESGという概念は、企業の長期的・持続的な成長に必要とされるなかで広まってきたものです。償還期限を設定せず、信託期間を無期限にするのべきではないでしょうか。もちろん、信託期間無期限のファンドは93本、全体に占める割合は41%で多数を占めているのですが、それでも半分以下でしかありません。

次に気になったのが組織体制です。ESG関連ファンドを運用するにあたって、ESG専門部署・チームの有無を聞いたところ、「有」と答えたのが26社で70%だった一方、「無」が11社で30%を占めました。

7割が専門部署・チームを設けている点はひとまず安心できるところですが、問題はESG専門人材の有無です。0人と答えた投資信託会社が14社で全体の38%にもなりました。つまり専門部署・チームはあるけれども、専門人材はおらず、他の業務と兼務しているケースが多いという実態が見えてきます。

この点は、投資信託会社の覚悟が見えるところです。本気でESGに取り組む覚悟を持っているのであれば、相応に専門人材を割く必要があります。

そもそも、「ESGを名乗らなければESG投資をしてはいけない」などという決まりはどこにもありません。それが投資信託の信託財産の長期的成長に必要不可欠なものだとしたら、現時点で運用されている、あらゆる株式投資信託の運用プロセスに、ESGを反映させる必要があるはずです。

そうだとしたら、投資先候補企業がESGに配慮した経営を行っているかどうかを判断するために、複数名の専門スタッフを張り付ける必要があるでしょう。その覚悟があるのかどうかが、この人数に現れてきます。ちなみに15~19人のESG専門人材を確保している投資信託会社は3社、10~14名が3社、5~9名が5社という結果でした。

また、「うちはESGインデックスに連動するパッシブ運用なのだから、専門人材を揃える必要がない」という投資信託会社もあると思います。しかし、いくらパッシブ運用のESG関連ファンドでも、ベンチマークとするESGインデックスの構成企業が、本当にESGに配慮した経営を行っているのかどうかを確認する必要はあります。その点を考えると、やはりESG専門人材がいないと答えた投資信託会社は、問題ありと考えるべきでしょう。

またESG投資のプロセス開示については、かなり問題ありと考えられます。レポートでも「一部の資産運用会社は、レポート等を活用して、自社としてのESG投資に対する基本的な考え方や取組状況を開示する等の対応を行っていない」、「多くのESG投信において、目論見書上、運用プロセスにおけるESG要素の考慮方法に関する記載が抽象的」と指摘しています。

この点は、投資家がどのESG関連ファンドを選ぶかを判断するうえで必要不可欠な情報ですから、抽象的な表現は避けるべきだし、そもそもESG投資に対する基本的な考え方や取組状況を開示するための対応を行っていないのは、大いに問題ありだと思います。