地銀再編の足踏みをよそに、7年連続でシェアを拡大させる信用金庫

地銀もメガバンクも前年からシェアを落としていますが、信用金庫は0.07ポイントの上昇となりました。2015年の調査開始以来、7年連続のシェア拡大です。信用金庫が金利競争を避けつつ、メガバンクや地銀、信用組合から取引先を獲得している姿が目に浮かびます。東京商工リサーチ情報本部情報部の後藤賢治氏は「信用金庫の取引先には小さな飲食店など個人事業主も多い。本調査は登記されている法人が対象なのでデータには表れないが、個人事業主の存在を考えれば、信用金庫をメインバンクとする事業主はさらに増えるだろう」と推測します。

なぜ信用金庫は評価されるのか。その大きな理由は、彼らが銀行のような営利企業ではなく、地域密着の協同組織であることに由来します。銀行と違い営利は第一目的ではないので、コストをある程度度外視し中小零細企業に手厚く接することができます。また信用金庫は営業地域が法律で厳しく定められているため、エリアを越えて事業活動することはできません。例えば地銀では、地方の銀行が貸出量を稼ぐため東京都内に出店するケースが増えています。信用金庫はこういった遠隔地への出店ができず、自分たちの営業エリアで活動し続ける。そのため、貸し剥がしのような金融機関本位の回収をすると悪評が広まり、自分たちの首を絞めてしまいます。また、短期的な業績追求の結果、地域企業を弱らせてしまうと、地域経済も衰退し、自分たちの将来にも悪影響を及ぼします。地域を守り、地域企業を育てることは、信用金庫に許された唯一の事業戦略なのです。

とはいえ、銀行と比較すると資金量も少なく、スケールの小さな支援しかできなかったのが、かつての信用金庫像でした。しかし、近年そのイメージは変わりつつあります。きっかけのひとつとなったのが、城南信用金庫(東京都品川区)が事務局を務める全国組織「よい仕事おこし」プロジェクトです。同プロジェクトは、全国の信用金庫がインターネットで、リアルで手を結び、互いの取引先のビジネスマッチング、販路拡大などを行う取り組みです。東日本大震災の東北支援をきっかけに始まったこともあり、地方の応援、活性化が活動理念となっています。