先祖代々の土地を物納することに

相続税は原則として、相続発生から10カ月以内に現金で一括納付することが求められる。ただ、加藤氏のように流動性の低い不動産が相続財産の大半だと、期日までに現金を用意するのが難しい場合もある。

現金での一括納付が困難な相続人に対しては、納付を分割して年払いにする「延納」や、金銭に換えて相続財産で納付する「物納」という例外的処置も設けられている。加藤氏も一部の土地については物納を選んだそうだ。

「安く買われてしまうくらいなら、市場価格よりも評価額の高い土地に関しては物納を選んだほうがいいと思ったんです。売却分と物納分あわせると、保有していた土地全体の1割以上を手放したことになりますね。物納した土地の前を通ることがあるのですが、20年以上経った今でも気持ちが辛くなります」

なお、延納・物納に関する手続きは2006年度の税制改正で厳格化されている。現在では延納が適応されるのは最低限な生活費以外、すべて納税に充てても納付しきれない場合のみ。物納は延納さえも不可能な場合に限られる。

「今よりも延納や物納が選びやすかったとはいえ、更地を担保にお金を借りるといったほかの対策にまで気が回らなかったのも事実です。

そもそも、相続税は即効性がある対策が難しいといえます。例えば、更地のうえに物件を建てると、更地のままよりも評価額が低くなるので資産を圧縮できるんです。しかし、相続発生からの期間が近すぎると節税対策と見なされる可能性がある。どちらにせよ、長期的に取り組む必要があったと思います」

加藤氏はこの教訓を2回目の相続でどう生かしたか… 後編へ続く>>

 

取材・文/笠木渉太(ペロンパワークス)