不動産賃貸業を承継するも、相続税が払いきれず

2000年、冬。当時、大学院生の加藤氏が研究室での忘年会に参加していると、1本の電話がかかってきた。

——お父さんが倒れた。

母親からの突然の知らせだった。

「余命3カ月と急に言われたんです。父はまだ52歳で、私は28歳。もちろん、何の準備もできていないわけです。せめて結婚した姿は見せてあげたかったので、当時お付き合いしていたパートナーに相談して急遽、結婚式を挙げることになりました」(加藤氏、以下同)

同年3月に挙式し、父親にも式の様子を見てもらえた。その後、加藤氏は父親の副業であった不動産賃貸業を相続したが、そこで初めて支払いきれないほどの相続税が発生することを知ったそうだ。

「1億円以上の税金がかかるというんですね。しかし、相続財産のほとんどは更地を含めた土地や収益物件で、手持ちの現金は3000万円だけ。相続税納付期限の10カ月以内にどうにか残りの7000万円分のお金を工面する必要があったんです。

結局、土地を売却して現金化することを決めたのですが、それにも問題がありました。土地の値段はバブル崩壊で下落している最中だったんです。また、売却を急いでいましたから、足下を見て買い叩かれる恐れもありました」