米長期金利の上昇が世界的な株価調整に

年明け以降、世界的に株式市場が大幅調整する場面がみられました。株価調整の主因としては、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ抑制のために金融政策の正常化を急ぐとの見方が強まり、米実質金利の上昇が主導する形で米長期金利(10年国債利回り)が大幅上昇したことが挙げられます。1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、3月の利上げ開始が示唆されました。また、パウエル議長は同会合後の会見で、毎会合での利上げ可能性を否定しなかったほか、量的引き締め(QT)についても取り組む意向を示しました。2022年の金融市場の行方を見極めるうえでは、FRBがタカ派姿勢を更に強めるかどうかや、米実質金利が一段と上昇する可能性が警戒されます。

まずFRBの一段のタカ派化という点はインフレ次第と考えており、その動向を把握するうえで「インフレ期待」が注目されます。インフレ期待とは、人々の将来のインフレ率の予想を表します。例えば企業の価格設定行動などに影響を与え、実際のインフレ率に影響を及ぼします。物価安定を担う中央銀行の金融政策運営にとって、重要な経済指標といえます。市場で参照されるインフレ期待にはいくつかの種類があり、消費者・企業を対象にしたものや、市場参加者を対象にしたものがあります。短期、中・長期といった期間別には、一般に前者はサーベイ(調査)を通じて、後者は物価指数に元本が連動する物価連動国債の価格などから把握します。

もとより現在の高インフレは、コロナ禍に伴う需給両面に起因する特殊な状況。需要面では、感染拡大を受けサービス消費が抑制され、個人消費がサービスから財にシフトしたことによる旺盛な財需要が、財のインフレ圧力になったと考えられます。供給面では、感染拡大に伴う工場の閉鎖など行動制限措置が供給網に混乱を生じさせ、輸送コストの上昇や製品納期の長期化などをもたらしました。