高コストで短期売買を前提とした商品設計

その知名度とパフォーマンスからSNS上でも頻繁に話題に上がるレバナスだが、注意すべき点もいくつかある。見落としがちなレバレッジ型投資信託の性質を見てみよう。

1.基準となるのは1日ごとの値動き

レバレッジ型投資信託が基準とするのは1日ごとのベンチマークの値動き。例えばある日の値が100の指数があったとする。この指数が

基準日:100
2日目:110
3日目:120

と1日ごとに10ずつ上昇していった場合、その騰落率は……

2日目の騰落率:110 ÷ 100 = 1.1(10%上昇)
3日目の騰落率:120 ÷ 110 = 1.09(9%上昇)

となる。一方、この指数の2倍の値動きを目指し、指数の基準日と同日の基準価額が1万円のレバレッジ型投資信託があった場合、以下のような値動きをする。

基準日の基準価額:1万円
2日目の基準価額:1万円 × {1 + 0.1(2日目の騰落率)×2(レバレッジ)}= 1万2000円
3日目の基準価額:1万2000円 × {1 + 0.09(3日目の騰落率)×2(レバレッジ)}= 1万4160円

3日間での指数の上昇率は1.2倍(120÷100)だが、レバレッジ型投資信託の値動きは通算で1.41倍と一致しない。繰り返しとはなるが、レバレッジ型投資信託が参照する値動きは1日ごと。ある時点から起算した場合、必ずしも参照指数の数倍の値動きになるわけではないのだ。

値下がり局面や、上昇・下降を繰り返しながら横ばい推移するケースでも同じことが言える。とくに、それまで少しずつ上昇しながらある日急落して基準日の値に戻った場合、騰落率を参照するレバレッジ型投資信託は元本割れを起こすリスクもあることは覚えておきたい。

「TOPIXは年間で3%程度上がるだろうから、2倍で6%のリターンが見込める」といった、ベンチマークの見通しから運用計画を立てる際には注意が必要だ。

実際に『楽天レバレッジNASDAQ-100』の投資目論見書には、複数の営業日で2倍程度になるとは限らないと明記されている。ETFにおいても、1日の値動きにしか完全連動しないことを周知するため『Daily(デイリー)』と銘柄名に冠されているものも多い。

2.同じ指数を参照するインデックスファンドと比較して保有コストが高い

前述したとおり、レバレッジ型投資信託では高いコストと手間がかかる先物取引が介在するため、現物の商品・銘柄を運用する場合と比べてファンドの管理費用は高くなる。そのため、インデックスファンドと比較すると投資家が負担する手数料も高く設定されている。

例えば、大和アセットマネジメントが運用するNASDAQ100ファンドの保有コストを比較すると……

特殊(レバレッジ)型
iFreeレバレッジ NASDAQ100
管理費用(含む信託報酬):0.99%

インデックス型
iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
管理費用(含む信託報酬):0.495%

というように、2倍の差がある。

手数料の中で最も注意すべきコストが信託報酬だ。これは設定された年率をもとに、ファンドの価格から日々割り引かれていくもの。投資信託の保有期間が長いほど投資家の負担は大きくなる。信託報酬が高いレバレッジ型投資信託は長期保有に向かず、短期売買を目的とした商品設計といえるだろう。

なお、外国株式を対象とした公募投資信託の約定日は注文日の翌営業日以降になる。そのため、注文時と売買時のタイミングにずれが生じ、機動的な売買自体が非常に難しいことも覚えておきたい。