デフレ経済の長期化が購買力を低下させる

11月17日、国際決済銀行(BIS)が10月の円の実質実効為替レートが68.71であると公表しました。この水準が過去と照らしてどの程度なのかというと、名目為替レートが1米ドル=79円75銭をつけた1995年の時には、150.85という最高値をつけました。まさに名目為替レートとともに、実質実効為替レートも最高値を更新したのです。そして当時はまだバブル経済の残滓があり、日本経済は今に比べて元気でした。

しかし、そこから実質実効為替レートは低下傾向をたどり、2015年6月に67.6まで低下。そこからやや回復の兆しを見せたものの、再び低下し始め、今年10月に68.71という水準をつけたのです。ちなみに、2015年6月の実質実効為替レートは1972年以来の安値水準だったので、今の68.71というのはそれに準ずるレベルであると考えられます。つまり円という通貨の持つ実力が、約50年ぶりの低水準に近づいているといえるのです。

円の実力とは何かというと、購買力のことです。仮に円の実質実効為替レートが1割下がれば、同じモノやサービスを海外で買ったり、輸入したりする際に、円換算での支払額が1割増えることを意味します。1995年から2021年までの26年間で、円の実質実効為替レートが150.85から68.71まで下がったのですから、円の購買力はこの間に82.14ポイントも下がったことになるのです。

なぜここまで円の購買力が下がってしまったのでしょうか。一番の問題は長期化しているデフレ経済にあります。日本の物価は1980年代のバブル経済が崩壊してから、長期にわたって下げ続けました。日銀は消費者物価指数ベースで年2%の上昇を目標に未曾有の金融緩和を継続。直近の消費者物価指数を見ても分かるように、目標値からはほど遠いのが現実です。対して米国をはじめとして海外諸国では物価が上昇してきましたから、この物価の差が円の実質実効為替レートを引き下げることになったのです。