労災保険は一部のフリーランスのみ特別加入が可能
労災保険は業務中や通勤中の出来事が原因でケガや病気をした際、または亡くなった場合に保険給付を受けられる制度です。会社員の方の労災保険料はすべて事業主負担であるため、加入している意識がない会社員の方も多いかもしれません。
業務中の”万が一”の備えが必要なのは会社員に限った話ではありません。労災保険は原則会社員などの労働者が加入できる社会保険です。しかしそれ以外の方でも職業によっては任意で加入できる場合があります。
一部職種のフリーランスなら加入できる! 労災保険の「特別加入制度」とは?
労災保険には「特別加入制度」があるのをご存知でしょうか?
特別加入制度は会社員などの労働者以外でも、一定の要件を満たす人が任意で加入でき保険給付を受けることができる制度です。
特別加入制度はこれまで個人タクシー事業者や建設工事に従事する一人親方など、特定の個人事業主に対象が限定されていました。しかし2021年9月から、以下の職業の方が新たに対象として加わっています。
・ 自転車を使用して貨物運送事業を行う者
・ ITフリーランス
「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」は最近増加しているウーバーイーツ等の配達員を想定しています。「ITフリーランス」も近年増加しているフリーランスの職種なので、該当するフリーランスの方にとっては朗報と言えるのではないでしょうか。
ただし保険料は全額個人負担となるため注意が必要です。特別加入の年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に対してそれぞれの事業に定められた保険料率をかけて計算します。令和3年のITフリーランスの保険料率は0.3%、ウーバーイーツ等の配達員であれば1.2%です。
特別加入の保険料の基礎となる「給付基礎日額」は3500円~2万5000円の範囲で加入者が申請します。たとえばITフリーランスの方が給付基礎日額を1万円とした場合の年間保険料は1万950円となります。
特別加入の年間保険料
=(給付基礎日額×365)×特別加入の保険料率
=(1万円×365)×0.3%
=1万950円
給付基礎日額の金額が少なければ年間保険料の負担額も少なくなりますが、その分もらえる給付金の額も少なくなります。保険給付等の種類や金額の目安を確認のうえ、適切な給付基礎日額を選択することをおすすめします。特別加入にあたっての詳細は最寄りの労働基準監督署に問い合わせてみるとよいでしょう。
労災保険に特別加入できないフリーランスはどうすればいいか
特別加入の対象が拡大されたとはいえ、まだまだ労災保険に加入できないフリーランスの方は多くいます。そのような方は民間の保険に加入することで、ご自身の “万が一”に備えることができます。民間保険は会社員でも加入している方は多いですが、労災保険に特別加入できないフリーランスの方にとって、さらに必要性は高まります。
病気に備えたい場合は医療保険、突発的な事故によるケガや死亡に備えたい場合は傷害保険というように目的に応じて加入する保険を選びましょう。
また業務に起因する病気やケガによって一定期間働けなくなる可能性もあります。労災保険の特別加入では休業補償給付が受けられますが、特別加入の対象ではないフリーランスの方はそのような場合に備えて、ある程度の金額を貯蓄しておくことが大切です。
十分な貯蓄がない方は、病気やケガによって不足した収入をカバーするための「就業不能保険」や「所得補償保険」に加入するという方法も有効です。