本連載では、ご質問への回答も含め5回に分けてアクティブファンドとインデックスファンドを多様な角度から比較しました。その結果を踏まえ、アクティブファンドからはインデックスファンドに勝るとも劣らない投資成果が期待できると思われることをお示ししました。また、ファンド選びに時間や手間あるいは多少のコストをかけても良いとお考えの方には、アクティブファンドの利用を積極的にご検討いただく価値は十分にあることをご説明しました。
それでは、アクティブファンドはどのように利用するのが賢明でしょうか?
ファンド間のパフォーマンス差が大きいと言われるアクティブファンドの中から“優れた”ものをどうやって選べば良いでしょうか? 今回より数回にわたり、筆者の25年のファンド評価経験から導き出した“優れた”アクティブファンドの選び方についてお話しします。
第1回目の今回は、アクティブファンドの選定の巧拙が運用成果に与える影響の大きさとファンド選定の重要さをご確認いただきます。
アクティブファンドの利用ではファンド選定が大きなポイント
同じ投資対象でも、どのファンドを選ぶかで大きなリターン差が
前回までの分析でも使用した野村総合研究所Fundmarkのデータを利用し、サンプル数や比較の容易さを考慮して(注1)、(1)国内株式、(2)国内債券、(3)国内不動産投資信託(REIT)のカテゴリーにおけるアクティブファンド間のリターンの差を測定します。
(注1)国内籍投資信託における海外資産(株式・債券・不動産)に投資するファンドの多くは、テーマ型や地域型など運用力以前に投資判断に制約がかかるファンドが多く含まれています。それらは、運用力ではカバーできない商品性の違いから運用成績が左右されてしまう傾向にあるため、運用力のみによるリターン差を測定するのは困難です。また実質的に同じ運用をするファンドでありながら為替ヘッジや分配頻度などで別ファンドとなっているものが多く存在しているため、実質的なサンプル数はそれほど多くはないという問題もあります。
(1)国内株式
広範な投資対象ユニバースを有して自由度の高い運用を行う国内株式アクティブファンド間のリターン較差は、以下の表のようにとても大きくなっています。最高のリターンを挙げたアクティブファンドと最低のリターンしか挙げられなかったアクティブファンドとの差は3年累積で88.2%、5年では176.3%となっています。 公的年金の運用が前提としている国内株式の期待リターン(注2)は年率5.6%ですので、最高と最低の間では3年間で期待リターン約16年分、5年間では約同37年分の差がついたことになります。
(注2)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用方針決定の際に前提としている国内株式の期待リターン。
ただし、アクティブファンドの選定で平均点が取れれば、インデックスファンドで運用するよりも相応に大きなリターンを挙げることができています。インデックスファンドに投資する代わりに、多少の手間や時間をかけても、アクティブファンドの選定を試みる価値はありそうです。
(注3)「アクティブファンド平均」は野村総合研究所Fundmarkによる分類で国内株式/一般/フリーのカテゴリーに分類される248ファンドの同研究所が算出する金額加重平均(NRI-FPI)リターン。「最高」および「最低」は同カテゴリーで最大および最小のリターンを挙げたファンドのリターン。「インデックスファンド平均」は同分類で、国内株式/インデックス/TOPIXのカテゴリーに分類される79ファンドの金額加重平均(NRI-FPI)リターン。
なお、このコラムをお読みの皆様の中には、「投資したいのでトップの成績を挙げたファンドを教えてほしい」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、本当にそう考えて良いでしょうか? 上記はあくまで過去の実績です。過去の実績は今後の運用成果にそのまま結びつくでしょうか? この辺りは次回以降詳しくご説明します。