【政策6】観光復興

観光業の支援についても岸田首相は政策集に盛り込んでいる。2020年7月から11月頃まで実施されたGo To トラベル事業を「Go To 2.0」として再開することにも意欲的だ。

Go To トラベル事業はコロナで減少した旅行需要や地方の観光関連消費を回復する目的で実施された。観光庁の公表によれば、期間中に少なくとも約8781万人泊の利用があり、支援額は5399億円以上にのぼるという。

主要な大手旅行会社に対して観光経済新聞が行ったアンケートでも67%の会社が「大きな効果があった」と回答しており、経済の活性化にある程度の貢献はしたといえるだろう。

岸田首相はGo To 2.0の実施にあたって、電子ワクチン接種証明活用の意向も示している。また、コロナ対策としては経口治療薬の年内実用化や予約不要の無料検査の拡大に取り組むことも表明している。

感染対策や治療体制の強化が徹底されれば前回よりも多くの人が利用し、交通や宿泊業などにも好影響が見込めるのではないだろうか。

【政策7】企業の情報開示の見直し

岸田首相は企業の情報開示の在り方にも触れている。大企業に対して長期的な視点から、株主だけでなく、従業員や取引先にも恩恵がある「3方良し」の経営を大企業に要請すると主張している。

そのなかで、四半期開示の見直しや経営戦略や経営課題、ESG要素といった非財務情報の開示強化にも取り組む見通しだ。

現状、上場企業については四半期ごと、年に4回の情報開示が義務づけられている。公開内容は売上高や当期純利益といった企業情報や事業の状況など。投資家にとっては企業の状態を判断するのに役立つ。

一方で、四半期開示には企業や投資家の短期志向を助長し、長期的な視点や成長を妨げるという批判もある。

昨今、持続可能な社会の実現に向け、環境への配慮や働き方の改善が重要視されるようになってきた。より良い社会や企業をつくるには、目先の利益にのみとらわれるのではなく、腰を据えた長期的な取り組みが大切だ。

また、財政や経営成績などの定量的情報以外の、企業の理念やビジョンなどを定性的に語る非財務情報の開示が強化されれば、新たな企業価値を見つける手がかりになるかもしれない。

四半期開示の見直しは企業判断の機会を減らしてしまうかもしれない。しかし、ESGの観点からは企業と投資家の双方にメリットがある取り組みといえるだろう。

投資も循環のひとつの形

岸田首相は「成長と分配の好循環」によって国民が豊かに生活できる経済を作り上げたいと述べている。投資も個人が企業にお金を預け、社会貢献やサービスの向上によって還元される循環を担うといえる。

今回、個人投資家にも関わりが深い政策をいくつか挙げた。自身の投資が生活や社会を良くする一環になると考えると、自分にとって新しい判断基準が生まれるかもしれない。

岸田首相は10月31日に衆議院の投開票を行うと表明している。総裁選で挙げた政策について具体的に取り組むのは11月以降となるだろう。

投資は政局を見定めて慎重に行いたいところだが、相場や周囲に流されない判断を心がけたい。