フィンテックと対面営業の中間が金融サービス仲介業
「私自身は、事業者起点で儲かるかどうかではなく、新しい枠組みを使って事業をしたい、新しいサービスを行いたい、という事業者に参画してもらいたい」と訴える中村氏。もう少し具体的なイメージとしては、「金融サービス仲介業の軸は2つあり、まず1つ目は『ユーザー起点』であること、2つ目は『準富裕層以下のお客さまの資産をメインターゲット』としている会社」だという。
「参入企業のメインはフィンテック系になると思います。まずは自社内でユーザーを持っていて、新しいサービスとして取り入れたい会社。その他にはBtoBサービスを主体に行っていて、その先のエンドユーザーに向けたサービスを検討している会社などにフィットすると感じています。販路を一般消費者に拡大することで事業の発展を考えている企業においては、経営に大きく寄与するのではないでしょうか」。
とはいえ、昨今はフィンテック系だけでなく、既存の金融事業者からの問い合わせも増加しているという。「生保代理店やIFA向けの説明会も頻繁に開催しています。生保募集人の方も、iDeCoやNISAなどの問い合わせが増えているようで、投資信託の取り扱いの希望者は増えています」。
しかし、単にこのモデルで収益を狙うのではなく、「本業に対していかにシナジーをもたらすことができるか? ドアノック的な発想が重要です」と中村氏は強調する。事業者はどうしても目先の収益に目が行きがちだが、「まずはこの枠組みを使って、ラインアップを増やして成功モデルを出していくこと」が、金融サービス仲介業の活性化のキーポイントだと考えているようだ。
一方で、「残念ながら成功モデルが見えにくいため、二の足を踏んでいる企業も多いようです」と話す。さまざまな事業者との対話を通して中村氏は、「金融サービス仲介業の位置づけを整理して考えると、フィンテックの考え方と、既存の対面営業の考え方の中間に位置するかもしれない」と捉えている。「最初はシンプルな商品群で、お客さまに説明しやすく、理解してもらいやすいもので十分だと、割り切ってスタートしていただきたいですね」。
現在、日本金融サービス仲介業協会は各事業者に参画を呼び掛けている一方で、「最も大切なのは、さまざまな金融機関の皆さまに興味を持っていただくこと」と中村氏は語る。「私たち事業者がまず、しっかりとした先行事例をつくり、銀行、証券、保険という金融機関の皆さまに、『やはりこの業種は必要だ、この業界なら安心できる』と理解を深めていただき、数多くの会社に参画してもらうことが重要なポイントです。私たちがいくら『お客さまに役立つサービスを提供する』と言っても、ソリューションとしての金融機関の商品ラインアップが無ければ、結果的には何のサービスも提供できません。金融機関の皆さまと一緒に、『舞台』をつくることが重要なのです」。
ベンチャー経営者としての顔も持つ中村氏は、多方面の協力を仰ぎながら、着実に実績を積み重ねた先に、金融サービス仲介業の明るい未来が拓けてくると考えているようだ。「最初から、あれもこれも叶えたいなんて不可能です。すべてを一気に取りにいくのではなく、目の前のできることから解決していくというベンチャー的な発想で、協会を動かしていきたいと思っています」。