柔軟でスピーディなサービスの提供が可能に

「日本金融サービス仲介業協会は、サービスの健全な発展に向けて、自主規制団体として発足しました。当初はフィンテック協会に加えて、各金融機関や弁護士事務所、SBIグループなどが中心となって業界の枠組みなどを検討していましたが、その中で、事業者側の代表として会長のオファーをいただきました」(中村氏)。

自らも「400F」というフィンテック系金融サービスの会社を経営していたため、「AIやビッグデータなどイノベーションが起きている中、家計簿アプリから顧客へのサービス提案、会計システムから融資提案など、ユーザー起点のサービスが確立できるのでは」と、金融サービス仲介業に大きな期待があったという。

そもそも、金融サービス仲介業の仕組みをあまりご存じない方にもポイントを説明すると、「1つのライセンスで銀行、証券、保険のさまざまなサービスが提供できる」「金融機関への所属制でないため、自社でコンプライアンス責任を負う必要がある。このため自社で賠償資金を準備する必要があり、『1000万+前年売上手数料の5%』という供託金が義務」「取扱商品は限定されており、『銀行は普通預金、外貨預金、住宅ローンなど』『証券は投資信託や国債、上場株など』『保険は生保1000万円、損保2000万円の保険金額制限があり、旅行保険、傷害保険など』」というのが大きな特徴だ。

この特徴に関して中村氏は、「スタートするには最高の仕組みが整いました」と評価するが、その理由を尋ねると、次のように答えてくれた。「日本で初めてのサービスが始まるわけですから、当然、お客さま保護のためにしっかりとした規制が必要だと考えています。所属制がないということは、自分たちの自覚と責任が求められます。特にフィンテック系などの新規参入企業は、金融のコンプライアンス知識がほとんどありません。だからこそ、最初は法令でさまざまな制限がかけられることは、当たり前ではないでしょうか」。

また、所属制がないということは、自覚を持った対応が求められる代わりに、柔軟にスピーディな対応ができるということでもある。「自分たちがしっかりと判断していけばいいのです。供託金に関しても、本気でこのビジネス参入を考える企業にとっては、十分賄える範囲の金額でしょう。商品に関しても、『範囲が限定されている』とか『カードローンが扱えないから魅力がない』などのコメントをいただくこともありますが、個人的には住宅ローン、外貨預金、投資信託を提供できることに意義があり、資産形成層をターゲットとするならば、十分なラインアップが揃ったと感じています。本音を言えば、保険金額はもう少し高額なら良かったのですが」。

さらに中村氏はこう続ける。「とにかく新しい業界の仕組みなので、儲かるとか儲からないとかという視点ではなく、『お客さまに何を提供すると生活が豊かになるのか』という発想が必要なのです。今後はアジャイル的、横断的発想で実績を見ながら、どんどん変えていけばいい。これはベンチャー的発想であり、まずはできる範囲で始めることが大事だと思います。社会的信用を得るためにも、最初はしっかりとした実績を出すことだけにこだわっていきたいですね」。