米国株が強い。

S&P500やナスダック指数が連日最高値を更新した。「まだ上がるのか」という声さえ聞かれるほど、上がり続けてきた。昨年8月、「なぜ米国株はこれほど強く、今後も株価上昇は続くのか」を書いてから、S&P500は3271ポイント(2020年7月末)から4520.03(2021年9月7日時点)まで38%上昇した。世界の株式市場の中で、突出した上昇幅だ。

尾藤氏作成

日本からも「やはり米国株だ」と、個人投資家の投資資金は米国へ、米国へと向かっている。なぜここまで強いのか、そしてこれからも上がり続けるのか、探ってみよう。

コロナショック期から、米国の対応は何においても迅速だった

まず、昨年来の市場の動きと市場を動かしたさまざまな要因から見てみよう。

2020年3月、ニューヨークダウが18000ドル台まで急落した時に、FRB(連邦準備理事会)が迅速に発した無制限資金供給の役割は非常に大きかった。リーマンショックの経験を十分に生かした形だ。これにより、コロナ禍の影響をまともに受ける旅行、航空などさまざまな業種が当面の資金ショートを防ぐことができ、そして、急速なマーケットのリバウンドにつなげた。

また、米国政府は2020年5月、アストラゼネカに最大12億ドルのワクチン開発の資金援助を行ったり、同じく7月にファイザーに19億5000万ドルを支払い、最大5億回分の供給を受けられるようにするなど、いち早くワクチン確保の動きを見せたのは、あとあと経済再開に向け、大いに後押しする形となった。日本政府がワクチン確保に2~3カ月の遅れを取ったのとは大きな違いだ。やることが大変迅速なのである。

また、生活支援金の支給も迅速で、決定してから数日で、小切手が送られてくるというペースだ。かつて米国に在住していた日本人にまで、間違って小切手が送られてきたほど、スピードを重視したのである。半年たっても手続きが滞り、支援金を受け取れない日本とは大きな違いである。こうした手厚い支援を受けた若者が、ロビンフッドなどスマホで簡単に取引できるアプリを活用し、GAFAや新興企業などの株をさかんに売買し、新しい投資家層が生まれているというのはいかにもアメリカ的である。

さらに、バイデン政権は2021年3月に、1930年代の「ニューディール政策」以来の規模という、2兆ドルに上る経済対策を発表した。老朽化した国内インフラの更新や半導体をはじめとする重要産業の強化を柱としたものだ。その後、製造業や建設業など従来型産業も息を吹き返し、雇用も確保され、急速な経済回復や株式市場の底上げにつながっている。

このような迅速果敢な政府、議会、中央銀行の動きを見れば、国民も先々の見通しが開けてくるのを感じるのはごく自然なことと言えるだろう。株式市場は、先の見通しが明るくなれば、上がる。

このところ、米国では、インフレが加速している。こうなってくると「FRBがいつテーパリング(量的緩和の縮小)を行ってくるか」という懸念が頭をもたげてくる。しかし、FRBパウエル議長は、このところのインフレは一時的として、市場の安心感を誘っている。またテーパリングをいつ行うかについて、市場に余計な不安を起こさせないハト派的スタンスで、その対話力は評価されている。現在のところ、市場のコンセンサスは、12月頃のテーパリング開始となっているが、このテーパリングによって、市場に急激なショックを与えるようなことはないだろう。

このような環境下、米国市場はGAFAM(グーグルを傘下に持つアルファベット、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)などハイテク株、小売り、製造、運輸、食品・日用品、医薬など従来型産業まで、全体底上げ的に上がって来ている。

以上がコロナ禍が始まってから、これまで米国市場が上昇を続けてきた背景である。