仮想通貨と言えばビットコインが有名ですが、世の中には他にも“星の数”ほどの仮想通貨が存在します。

特にICO(Initial Coin Offering)という資金調達の形をとった、仮想通貨詐欺が横行しています。

ICOとはトークン※を使った、主に企業による資金調達方法です。資金調達をしたい企業は新たに独自トークンを発行し(この時点ではこのトークンにほぼ価値はありません)、投資家はビットコインやイーサリアムといった仮想通貨による支払いでトークンを購入。企業はそのビットコインやイーサリアムを換金することで、資金を調達します。事業が成功すると企業が発行したトークンの価値が上がり、投資家に還元されるという仕組みです。

※トークンとは、独自のブロックチェーンを持たず、既存の仮想通貨のプラットフォームを使って存在する仮想通貨。

ただ、このICOは「8割が詐欺案件」とも言われており、だまされないように注意が必要です。

今回は仮想通貨ICOの詐欺に遭ってしまった内山さんの体験談をもとに、ICOの実態や対処方法を考えてみましょう。

300万円を失った内山さん(仮名)の場合

内山さんは36歳の会社員。資産形成に関心がありましたが、会社の給料は高くありません。このままでは目標としている老後資金3000万円にいつ届くのか見えない状況です。

「何か良い投資はないだろうか?」とネットサーフィンをしていました。

そんな時に見つけたのが、とある企業の「仮想通貨ICO」のサイトです。そこには以下のようなことが書かれていました。

「今後、確実に発展の見込まれるA国(発展途上国)への投資」

「投資方法は仮想通貨のICO」「配当金30%」

「先着順。なくなり次第終了」「有名企業社長のB氏も投資している」

「最低○円の価格保証」

などなど。

そのサイトにはA国の人口が増え続けていること、外国企業からの投資が増加していること、近年のGDPの上昇率なども書かれており、内山さんも知っている新興IT社長のB氏も投資しているとのことでした。

内山さんは俄然関心を持ち、サイトに掲載されていたセミナーに申し込みました。当日はコロナ禍であるにもかかわらず大盛況。豪華なパンフレットが配られ、主催者が感動的なスピーチを行って、参加者は一体となって大盛り上がり。内山さんもすっかり雰囲気に呑まれてしまいました。

セミナーの帰り際、ほとんどの参加者がその場でコイン(トークン)の購入を申し込んでいました。投資額は「最低200万円」と高額。それでも内山さんは「絶対儲かる」と確信していたので、迷いなく申し込みをしました。

結局、後日イーサリアムによって300万円分の払込みを行いました。

ところがその後、事業が起こされる様子が一切ありません。報告があると言われていたのに、進捗状況を含め何の連絡もありませんでした。もちろん年30%配当も行われません。

しびれを切らした内山さんが業者に問い合わせようとすると音信不通に。内山さんは「だまされた」と気づきましたが、「時すでに遅し」でした……。