finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
金融専門の公認会計士が示す 攻めの金融商品会計のアイデア

バーゼルⅢの不動産エクスポージャー

岡本 修
岡本 修
新宿経済研究所 代表社員社長 公認会計士
2024.07.25
会員限定
バーゼルⅢの不動産エクスポージャー

LTVでリスク・ウェイトが変わる!

バーゼルⅢ最終化と呼ばれる新しい金融規制が、2025年3月末以降、すべての国内基準金融機関に適用される。新規制まで残り9ヵ月あまりとなり、各金融機関ともに規制対応でおおわらわとなっているのではないだろうか。

こうしたなか、そのバーゼルⅢ最終化を目前に、著者自身の会社にも複数の顧客から多くの質問が寄せられているのだが、そのなかでもとくにややこしいのが、不動産に関する規定だ。

バーゼルⅡ規制下では、不動産といえば、特殊なもの(たとえばJ-REITや不動産証券化案件など)を除けば、標準的手法の元では大きく①抵当権付住宅ローン(フル保全などの要件を満たしているものは35%)、②抵当権付住宅ローンの要件を満たさなくても、中小企業や個人に対するエクスポージャーであれば75%、③不動産取得等事業向けエクスポージャー(リスク・ウェイトは100%)…など、リスク・ウェイトに関する考え方は比較的シンプルだった(図表1)。

図表1 バーゼルⅡにおける不動産関連エクスポージャー(標準的手法)の考え方

(出所)著者作成

 

厳密にいえば、これら以外にも、たとえばJ-REITをどう取り扱うか、不動産証券化商品などはどう考えるか、といった論点もあるのだが(この点はバーゼルⅢにおいても同じ)、これらに関してはとりあえず、本稿では省略する。

ポイントは「5種類のエクスポージャー」とLTV比率

ところが、この考え方が、バーゼルⅢ最終化によって、大きく変わる。

不動産に関しては大きく2つの判断軸がある。不動産の用途が居住用であるか、それ以外であるかという軸に加え、その返済原資が不動産からのキャッシュ・フローに依存するかどうかという軸だ。これに「不動産の取得、開発、建設(Land acquisition, development and construction)」を意味する「ADC向けエクスポージャー」を加えた5つのカテゴリーが新設された(図表2)。

図表2 バーゼルⅢにおける不動産関連エクスポージャー(標準的手法)の考え方

(出所)著者作成

 

ここで、ポイントは2つある。

ひとつは、不動産エクスポージャーに関する規定が5つ(自己居住用、賃貸用、事業用、その他、ADC)にわかれたことと、もうひとつは(ADC以外は)LTV比率に応じて、複雑にリスク・ウェイトが変化することだ(図表3)。

図3バーゼルⅢにおける不動産関連の考え方

(出所)著者作成

 

ということは、バーゼル規制に従いエクスポージャーに適切なリスク・ウェイトを割り当てるためには、そのエクスポージャーが「不動産」だったとして、それが①どの不動産に該当しているか、②それぞれにLTV比率を算出することはできるか(あるいはどうやって算出するか)、という、大きく2つの論点が悩みどころとなることを意味している。

LTV比率は実務的にどう算出するのか

とくに大きな課題が、LTV比率の算出だろう。

LTV比率は「貸出金の額÷物件の価値」で算出され(たとえば告示第68条第4項等)、貸出金額が同じであっても、物件価値が高ければ高いほど(つまりLTV比率が低ければ低いほど)低リスク・ウェイトを適用することができる、というメリットはある。ただ、リスク・ウェイトを算出するタイミングごとに、不動産関連エクスポージャーをすべて集め、LTV比率をエクスポージャーごとに計算するというのは非現実的だ。

とりわけ著者自身に寄せられる質問の代表格が、同一債務者に対するローンの対象となっている不動産の担保の考え方だ。

たとえばある債務者に対する貸付金について、その債務者にとっての自己居住用物件や賃貸用物件などを兼ねている場合にはどうするのか、といった課題が考えられる。もっとも、金融庁のQ&Aなどを読む限りにおいては、たとえば面積的に見て、自己居住の用途に供される部分が大きいなどの事情があれば、その全体を「自己居住用不動産等向けエクスポージャー」とみなすなどの扱いは認められると考えられる。

あるいは、他行と担保が入り混じっていて、とくに他行が先順位で担保権を持っているようなケースだと、LTV比率を正確に算出するためには、現時点の正確な債権額などの情報が必要となるが、そのような情報など手に入らない可能性もある。このような場合は他行が第一順位の根抵当権を設定している場合は、その時点における他行の債権額に変えて、極度額を他行のエクスポージャーとみなす、といった扱いも容認され得ると考えられる。

いずれにせよ、不動産エクスポージャーに関しては、早めの準備が必要であることは間違いないだろう。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #会計・税制
前の記事
「通貨スワップ費用が損金不算入」報道で注目される過大支払利子税制
2024.06.25
次の記事
なぜいま「仕組みローン」なのか
2024.08.26

この連載の記事一覧

金融専門の公認会計士が示す 攻めの金融商品会計のアイデア

国債に減損処理が必要なのか

2025.08.25

アセット・スワップの会計:「途中からヘッジ」は認められるのか

2025.07.23

改めて確認するアセット・スワップ会計の実務

2025.06.25

未履行のコミットメントに適用するリスク・ウェイトは何%?

2025.05.20

バーゼルⅢ最終化で振り返る「規制強化」の歴史

2025.04.21

組合で保有する非上場株式の時価評価容認へ

2025.03.25

リース会計がもたらす金融機能の低下リスク

2025.02.20

リースのオンバランス化とリスク・アセットへの影響を探る

2025.01.22

銀行自己資本比率規制におけるデリバティブの扱いをまとめてみる

2024.12.23

クレジット・リンク商品のリスク・ウェイトとは?

2024.11.20

おすすめの記事

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
③日本の金融リテラシー向上へ、将来の資産運用を支える人材を育てる

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

文月つむぎ

第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?

篠原 滋

資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす

finasee Pro 編集部

金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部

著者情報

岡本 修
おかもと おさむ
新宿経済研究所 代表社員社長 公認会計士
1998年 慶応義塾大学商学部卒業後、国家公務員採用一種試験(経済職)合格。中央青山監査法人(2000年)、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)(2002年)を経て、2006年にみずほ証券入社。9年間、債券営業セクションにて金融機関を中心とするソリューション営業に従事し、2015年に金融商品会計と金融規制に特化したコンサルティング・ファームの合同会社新宿経済研究所を設立、現在に至る。株式会社Stand by C顧問。公認会計士開業登録(2004年)。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
第13回 運用資産に関わる常識を疑え!(その2)
高金利通貨での運用は有利?
ゆうちょ銀行・郵便局の売れ筋上位は株式インデックスファンド、「TOPIX」のパフォーマンスが「S&P500」に迫る勢い
社保審系会合でGPIFが「安定的収益を確保」実績を強調、オルタナティブ+インパクトの強化策に有識者から注文も
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
面積最小でも貯金好きの県民性?香川県の金融事情【金融風土記】
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
金融庁の大規模改編案は、下火気味の”プラチナNISA構想”の二の舞になるのか?【オフ座談会vol.7:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】
【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
①国内外の金融50社超が参加!資産運用フォーラムが目指すもの
社保審系会合でGPIFが「安定的収益を確保」実績を強調、オルタナティブ+インパクトの強化策に有識者から注文も
常陽銀行の売れ筋で期待を高める株式アクティブファンドとは? 売れ筋トップの「日経225」は上放れに安堵
2025年NISAアンケート調査の結果から見える地域金融機関の投信販売施策
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
資産運用立国の実現に向けた官民対話の新たな挑戦──「資産運用フォーラム」が描く日本市場の未来とは
②DX・企業価値・サステナ・オルタナの4分野で日本を動かす
信頼たる資産運用アドバイザーには理由(わけ)がある “進化”した米国の資産運用ビジネスから日本が学ぶべき点は何か? 【米国RIAの真実】
【連載】こたえてください森脇さん
④ネット証券ではなく、自金融機関で投信購入するメリットを説明できない。
FPパートナーへの業務改善命令は"FDレポートの保険版"?金融庁が処分にこめた3つのメッセージ
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
【みさき透】金融庁、FDレポートで外株の回転売買に警鐘 「2、3の事例はアウト」か
DCは本当に「儲からないビジネス」なのか? 業界活性化の糸口はカネではなく「情報」に?
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか
令和のナニワ金融?万博でにぎわう大阪府の金融機関事情
【金融風土記】
「支店長! 同行訪問していただく際、緊張してうまく話せなくなってしまいます!」
【連載】こたえてください森脇さん
③マーケットに動きがない、アフターフォローとして何を聞くべき?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら