金融庁が提起する「フィデューシャリー・デューティー」(以下、FD)は、単なるルールではなく、資産運用に携わる者の「ビジネスモデル」そのものであることを示してきた。FDの本旨は、表層的な顧客対応からの脱却にある。「もっぱらに顧客のために、信認の関係で、プロフェッショナルとしてベストをつくすこと」で、真に顧客の視点から物事を考え、真摯に取り組む。そして、その顧客に応じた様々なニーズやウォンツをつかみとり、非金融を含めたサービスを組み立てていくことが、顧客本位の対応といえる。 今回は、金融庁が資産運用ビジネスのあり方を考えていくにあたり、全体像として提示している「インベストメント・チェーン」と、資産運用ビジネスの担い手という観点から話を進めていきたい。 金融庁において長年、市場分野の行政施策に携わってこられた前・企画市場局長の古澤知之氏に、その根底としてどのような金融構造の変化があり、どのようなことを考えながら金融行政を進めてきたのか、お話をうかがった。