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プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

finasee Pro 編集部
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2025.04.30
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プラチナNISA新設に現実味、金融庁の懸念は業界がつい先送りした”アレ”の管理【オフ座談会vol.3:かやば太郎×本石次郎×財研ナオコ】

かやば太郎氏 業界は「プラチナNISA」、「こども支援NISA」の話題でもちきりですね。岸田文雄前首相が率いる資産運用立国議連が提言を正式に取りまとめ、23日に石破茂首相に渡しました。

財研ナオコ氏 これまで金融庁は基本的に、毎月分配型を批判する姿勢を取ってきた。NISA拡充を機に一部事業者で奇数月、偶数月の隔月分配を同時に設定して「オーダーメイド毎月分配」を組成する動きがあり、当局が難色を示したことも記憶に新しい。手のひら返しに対する業界側の不満も大きいだろう。

本石次郎氏 ただ、そういう不平不満もすぐに薄れるでしょう。証券界、銀行界にとって新枠創設は、メリットが少なくないですから。

かやば氏 NISA口座を開設した高齢層が亡くなって相続が必要になった際に、二つの新枠が「口座の流出を防ぐ二重の防波堤になる」(有力証券会社幹部)という声も聞こえますね。

財研氏 預金が地方から都市部に流出する話はよく聞くけど、NISAでも同様の危機感があるからね。ネット証券などが提供する定期売却サービスはあまり人気がないが、「毎月分配型は商品自体に『自動解約機能』がついているようなもので、わざわざ定期売却を設定するよりも抵抗が少ない」(IFA幹部)と評価する声もある。

本石氏 「NISA貧乏」なんて言葉もある通り、物価が高騰する中で若年層に積立額を増額してもらうのは限界があるでしょう。岸田氏が自身の政権下で強調していた「成長と分配」を実現するには、国内家計資産の多くを占める高齢者層の預貯金を取り込むことが最優先です。

財研氏 高齢層にはそれなりに引きがありそうだし、政府と業界の思惑とも一致する。「三方よし」の計画といえるのかな。

かやば氏 ただ、民間側でコスト負担を嘆く声も大きいですよ。「せっかくプロダクトガバナンス確保のために製-販の情報連携の枠組みを作ろうとしているのだから、成長投資枠に毎月分配型を追加するだけで事足りるのではないか」という意見もあります。

本石氏 それについてある金融庁幹部は「高齢者をターゲットにした低リスク志向の商品は成長投資枠、つみたて投資枠のいずれにも存在するので、成長投資枠に限定するよりも、新たに別枠を設けて双方からスイッチングを可能にする制度設計が妥当」と話していました。

 

システム改修は大丈夫か

財研氏 システム改修の課題については業界だけでなく、金融庁内でも心配する声が聞こえる。24年1月のNISA拡充は急ピッチで進められたので、生涯投資枠の管理方法は先送りされがちだったが、「仮にプラチナNISA枠と既存枠とのスイッチングを可能にする場合には、生涯投資枠の残額と購入額などのデータを紐づける管理が必要になる。業界側で準備が進むのかどうか……」(有力幹部)と心配する向きがある。

本石氏 少し理屈っぽい話になりますが、プラチナNISA計画には、積立投資の奨励が宿命的に抱える「利益相反」の問題に対する一つの答え、という側面もあります。

財研氏 積立投資はドルコスト平均法の性質上、相場がある程度変調した方が最終的な実現益を増やしやすい。しかしそれでは、持続的な経済成長を後押しする政府の立場と矛盾するのではないか、広い意味での利益相反にあたるのではないか、という話だね。

かやば氏 興味深かったのが、トランプ氏の関税措置表明直後、加藤勝信・金融担当大臣が記者会見で用いた独特の言い回しです。「価格があるものについては上がったり下がったりする中で、積み立てて長期的に運用していくことが、結果的に資産運用としては適切ではないか」、「資産運用立国に向けて必要な対応はしっかり打っていきたい。そういった意味においては、金融経済教育等をしっかり進めさせていただきたい」と話していました。

財研氏 さすがに「積立投資に励む若者にとっては株が下がってよかったじゃないか」なんて言えないにせよ、「結果的に」とクッションをはさみつつ、狼狽売りに走らないよう冷静な判断を呼び掛けた形だね。

本石氏 積立投資の実現益は解約のタイミングに左右されます。毎月分配は「逆ドルコスト平均法」の効果があり、積立と同じ理屈で市場変動の影響を軽減できると言われます。相場がトランプ関税に翻弄される状況では、かえって事業者側にこうしたメリットを訴えやすいのかもしれないですね。

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