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【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを

中村 裕己
中村 裕己
NTTデータ エービック P&Cオフィス シニアアナリスト
2025.05.02
会員限定
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ<br />③トランプ関税でボラティリティが高まる今こそ能動的なフォローを

 

投信への資金流入額が過去最高水準になると投資環境が変化する!?

2025年1月の投信への月間資金流入額*は、2007年7月の1兆7,553億円を上回る2兆1,212億円となり、約18年ぶりに過去最高額を更新しました。

*公募株式投信(除くETF)設定額-(解約額+償還額)

過去の投信への月間資金流入額の推移をみると、資金流入が最高額を更新すると、その後、投資環境が大きな転換点をむかえる傾向が見られます。

 

 

1989年12月に当時の最高額である1兆1,065億円の資金が流入しましたが、その後、日本経済はバブル崩壊の長期低迷期に入りました。流入額は、過去最高額に及ばないものの2000年2月には、1兆960億円の資金流入の後、ITバブルが崩壊しています。

2007年7月の後は、サブプライムローン問題の顕在化から翌年のリーマンショックへと繋がっていきました。

 

急落の後、資金流入額が回復するまでは相当の期間が必要

ショックの後は、マーケットが落ち着きを取り戻し、上昇に転じるまで一定の期間があり、投信への資金流入が高水準となるまでには、さらに期間を要しています。

過去の例からは、急落後も投資をやめず、資金を新たに投入することで、回復の期間が短縮されることは明らかです。

しかし、投資環境が変化したことによって、資金流入額が増加していく過程で前提としていたことが崩れてしまい、投資をやめてしまう、または保有しているファンドを塩漬けにして、ある程度、基準価額が回復したところで、ヤレヤレの売り…その後は、投資から距離を置く、といった人が多かったものと思われます。

新たに投資意欲が高まるには、投資環境が落ち着くだけでは足らず、ある水準まで上昇する必要があり、その間の投資チャンスを逃してしまうといったことを繰り返してきました。

これが、世界経済が成長していても、日本の個人が投信による投資の成功体験を醸成できなかった最大の要因であると考えられます。

 

ダイアグラム

AI によって生成されたコンテンツは間違っている可能性があります。

 

能動的なフォローが重要な時期

過去の同じような経緯を辿るかどうか分かりません。

今回は、NISA制度が導入されたこともあり、長期の資産形成目的の資金が多く流入しているので、短期の値動きには一喜一憂せず、冷静な投資判断をする人もいるでしょう。

しかし、年初から4か月間にわたり、主要な市場が下落を続け、多くのファンドは年間リターンがマイナスとなり、新NISAをきっかけにして投資を始めた人の多くは、評価損を抱えているといった状況にあると思われます。

いくら長期の資産形成目的の投資なので、短期の値動きには一喜一憂しないといっても、少しずつ心配になっていくのではないでしょうか?

そうならない為に、心配になった顧客からの問い合わせに答えるといった受動的なフォローだけでなく、顧客が心配になる前のフォロー、つまり能動的なフォローに取り組んではどうでしょう。

 

今、何を顧客に伝えるべきか

能動的なフォローで伝える内容は、特別なものではありません。

足元の金融市場の現状を伝えることは必須となりますが、株式を主要投資対象とするファンドであれば、ストレートにトランプ関税が世界経済に及ぼす影響と関連付けて説明できるでしょう。

注意が必要なのは、バランスファンドを保有している顧客への対応です。

バランスファンド保有者は、分散投資によるリスク低減効果を期待して、バランスファンドを選択した(あるいは提案した)ものと思われます。言い換えると、今回のように株式が大幅に下落する局面でも、下値を抑えた運用をしたいという、リスクに敏感な顧客といえます。

ところが株式等のリスク資産の比率が低い、「安定型」のバランスファンドであっても過去1年でマイナスリターンのファンドが多くあります。株安、円高ドル安となっていることに加え、4月は、従来のリスク回避局面では選好されてきた米国国債も売られてしまい、教科書通りのリスク分散効果が効かない状況になっているためです。

確かに株式100%のファンドに比べ、下落率は小さく抑えられているものの、マイナスリターンであることには変わりなく、顧客が不安になる可能性は十分あります。

 

バランスファンド保有者に対するフォローに際して伝えるべきは、以下の2点でしょう。

①「バランスファンドはリスクが低い」「バランスファンドは安定的」だから安心して投資できる…というイメージはあくまで相対的なものであり、株式100%のファンドに比べてということであること

②株式と債券の相関が高まる局面もあるが短期的なものであり、​長期的に見れば、低相関(逆相関)の関係となること

 

株式ファンドでもバランスファンドでも、伝える内容は当たり前のことです。顧客が不安になってからの問い合わせに対する答えだと、何を今さら…となってしまい、不安から不満へと発展しかねません。

問い合わせが来る前の能動的なフォローだからこそ、顧客が不安になって投資から距離を置かないようにする効果が期待できるのです。

 

同じ轍を踏まないために

過去、投資環境が大きく変化するたびに投資から距離を置き、結果として十分な投資成果を残せないといったことを繰り返しています。

投信販売会社の皆様の顧客が、過去の投資家と同じ轍を踏まず、今度は投信による資産形成が実現できるよう、トランプ関税でマーケットのボラティリティが高まっている今こそ、能動的なフォローが重要な時期と言えるでしょう。

 

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著者情報

中村 裕己
なかむら ひろみ
NTTデータ エービック P&Cオフィス シニアアナリスト
1985年 一吉証券会社(現いちよし証券)入社、金融商品部長等を歴任。投資信託の企画選定、販売プロモーション等の業務に携わる。2008年 コスモ証券(現岩井コスモ証券)。証券会社においては、投資信託の企画・選定、 販売プロモーション企画・立案等の業務に長年携わる。30年以上に及ぶ投信関連業務歴を生かした、顧客目線の投信選定と分析が信条。2018年よりNTTデータ・エービックに参画
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