秋の臨時国会で金商法改正案の成立はなるか 解散含みで微妙な日程
6月21日に閉会した通常国会では、金商法改正案などが参院で継続審議とされた。衆院では与党の自民党、公明党に加え、野党の国民民主党が賛成し成立していた。
同改正案には企業が国に提出する義務のある四半期報告書を廃止や国民の金融教育を担う「金融経済教育推進機構」を設立する内容が盛り込まれている。
四半期報告書の廃止は企業の事務負担を軽減することが狙いで、岸田首相が21年10月の政権発足時の所信表面演説で実現を訴えていた。金融経済教育推進機構は国民の金融リテラシーを高めることに加え、貯蓄から投資へ国民を誘う「中立的アドバイザー」の認定機関の役割も担う。どちらも岸田政権の看板政策に関わるもので是非とも成立させたい。
この法案が否決される恐れは小さいが、問題は日程だ。7月の衆院解散を逸した岸田文雄首相は内閣改造などを経て、秋の臨時国会での解散を目論む。
この状況は01年のDC法案の審議を彷彿(ほうふつ)とさせる。同法案は2度の国会を経ても成立せず、3度目の国会では会期中に当時の森喜朗首相が辞任し、自民党は総裁選に突入。そのまま国会は休会となり、法案成立は三度危ぶまれた。
しかし、小泉新首相の誕生後に再開された国会で、厚労省年金局の幹部は与野党に猛烈な根回しを展開する。DC法と同じく懸案だった厚生年金基金の公的年金部分の国への返上を認める確定給付企業年金と法の同時成立にこぎ着けた。
霞が関の官庁は法案を作ったり業界を指導したりするだけでなく、政治との駆け引きも重要な仕事だ。ここでも栗田金融庁の手腕が問われることになりそうだ。
運用立国のけん引役は年金基金、厚労省などとの協働がカギに
生保業界への対応や金商法の改正案を成立させたうえで、金融庁が取り組むのが「資産運用立国」の実現だ。政府が6月16日に閣議決定した「新しい資本主義」実行計画の改訂版には「資産運用立国に向けた取り組みの促進」という項目がある。ここには運用会社と並んで年金基金などアセットオーナーの運用高度化を促すことへの強い決意が示されている。
具体的には、年金基金などのガバナンスの改善や運用能力の向上、投資資産の多様化が挙げられている。大規模な資金を長期にわたって運用するプロの投資家である年金基金などの運用高度化なくして「資産運用立国の実現はあり得ない」(官邸関係者)からだ。
いうまでもなく年金基金は厚労省の所管だ。そして厚労省にも資産運用、特に年金運用の知見がある。そうしたものを取り入れ、同省などと協働しつつ、資産運用業を高度化させるのが栗田金融庁の最大の課題だろう。新体制の奮起に期待したい。
執筆/霞が関調査班・みさき透
新聞や雑誌などで株式相場や金融機関、金融庁や財務省などの霞が関の官庁を取材。現在は資産運用ビジネスの調査・取材などを中心に活動。官と民との意思疎通、情報交換を促進する取り組みにも携わる。