野村アセットマネジメントは、国内で最初に設立された運用会社の1つで、以来、業界リーダーとして投信市場の発展に努めてきた。「新NISA」に向けても、制度としての定着を目指す一方で、「プロダクト・ガバナンス」の高度化によって投信市場全体の信頼性の向上を目指す取り組みを強化している。同社の「新NISA」に向けた取り組みについて、商品戦略と管理維持を担うプロダクト・マネジメント部長の佐伯進氏(写真:左)、販売会社との接点を担う資産形成ソリューション部長の川嶋昭臣氏(写真:中央)、そして、顧客満足につながる販売サポートを担うCXソリューション部長の野口裕史氏(写真:右)に聞いた。
――新NISAが投信市場に与える影響は?
川嶋 従来は、「一般NISA」は5年で総額600万円、「つみたてNISA」が20年で総額800万円という期限付きの制度であったことに対し、新NISAは無期限で1人あたり最大1,800万円という大きな枠になります。制度が恒久化されたことに加え、夫婦では2人合わせて3,600万円という非課税枠が使えるようになりますから、金融機関の取り組み姿勢は、大きく変わらざるを得ません。
特に、地方銀行では、新NISAを推進していくためのビジネスモデルづくりを真剣に考えていることが伝わってきます。新NISAは、投信窓販を大きく動かすエポックメイキングな出来事になると考えています。
たとえば、「つみたてNISA」は、20代、30代という若い方々が、ネット情報やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じた情報交換などによって、自ら進んでネット証券などに口座を開いて投信のつみたてを始めるという行動が注目されました。しかし、国民全体からみると、その動きは一部の人たちにとどまっていたと思います。投信のようなリスク商品を購入することは、やはり、信頼のおける専門家からのアドバイスが必要ということが一般的です。新NISAについては、投信窓販に取り組んでこられた地方銀行の方々が非常に熱心に推進策を検討されていることに、大きな可能性を感じています。
まして、これまでになかったインフレ(物価上昇)という環境にあり、国内株式市場の上昇、そして、低金利時代の継続、円安傾向などという環境も後押しをして、新NISAが今一度、投信窓販を見直すきっかけになるのではないでしょうか?
――近年人気がある超低コストのインデックスファンドが、新NISAでも主力商品となっていくと、相談員を置く投信窓販で積極的に取り扱うのは難しいのでは?
川嶋 低コストのインデックスファンドをオンラインチャネルで購入することだけが新NISAの利用シーンになるとは思えません。また、つみたて投資の手段として株式インデックスファンドだけで十分なのでしょうか? むしろ、つみたて投資に相応しいアクティブファンドがあるのではないかと考えています。アクティブ運用の力を知っていただくことには、窓販の説明力が必要で、それによって新NISAが投信窓販を活性化させるきっかけになるのではないかと考えています。実際に、販売会社の方からはアクティブファンドについての問い合わせが多く入っています。