――「新NISA」に向けた日興アセットの取り組みは?
今年3月17日に販売会社の方々をお招きして「新NISA戦略アカデミー」を開催し、私どもの「新NISA」についての取り組みについて発表しました。対面での窓口販売向け、ネット・オンライン販売向けの商品のご案内、そして、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という制度の枠組みの特徴を活かした商品や投資の考え方など、投信市場の現状や今後生まれてくるであろう投資家のニーズを踏まえて、今の時点で考えられる様々な取り組みについて話をしました。販売会社の方々の関心も高く、当日は約100社から150人ほどの方に参加していただきました。また、私どもが新NISA向けに提供を予定している商品リストや新商品の開発計画についても発表しました。
当社の「新NISA戦略アカデミー」は、業界に先んじたものだと思います。一足早く販売会社の方々と対話を始めたアドバンテージを活かして、「新NISA」では存在感のある運用会社になりたいと考えています。この「新NISA戦略アカデミー」の際に、ネット投資家のニーズを捉えた新商品案の1つとしてご紹介したのが、4月26日に新規設定した「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」です。これは、当社のネットチャネル専用の低コストノーロードファンドシリーズですが、コスト削減に徹底的にこだわり、信託報酬率を年0.05775%(税込み)で設定しました。つみたてNISAの対象商品として、「新NISA」のつみたて投資枠でも活用していただける商品です。
また、「Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」と同日の設定日で「インデックスファンドMSCIオール・カントリー(全世界株式)」の運用もスタートしています。こちらは、信託報酬率を年0.4785%(税込み)とした窓口販売用のインデックスファンドです。
そして、「Tracers」シリーズはオンライン窓口専用商品として品揃えを拡充する計画です。「新NISA」の「つみたて投資枠」の対象ファンドにするためには、厳しい条件をクリアする必要がありますが、指定インデックスを組み合わせた商品には、まだまだ可能性があると考えています。すでに「Tracers グローバル3分法(おとなのバランス)」という指定インデックスを組み合わせて「つみたてNISA」に適合する商品を提供していますが、このような商品の選択肢を増やしていきます。オンライン窓口は、お客様がご自身の判断で投資対象を選ぶことになりますので、その選択するニーズに応えられるよう、商品の特徴がわかりやすく、その商品を選択するメリットがわかりやすい商品が必要だと考えています。
一方、窓口販売用の商品としては、ラップ型の商品に可能性があると考えています。お客様のリスク許容度や投資の目的に沿って、お客様に相応しい商品を提供するということは、相談を受けて商品を提供するという対面販売の特性が発揮できる商品といえます。また、市場変動時においてもお客様のご意向を確認しながらきめ細かな調整がしやすいというのもラップ型商品の魅力です。「ラップ口座」は、一般に数百万円というまとまった資金の受け皿になっていますが、「新NISA」の「成長投資枠」は、年間投資枠が240万円ですので、より小口の資金の受け皿としてもラップ型の商品には可能性を感じます。
また、近年は世界的に金利の水準が上がってきているので、海外の国債や社債を使った商品も必要になると思います。一般的に株式100%のインデックスファンドがつみたて投資では使われていますが、やはり、株式の値動きには「怖い」と躊躇されるお客様は多いと思います。株式よりも価格変動率が穏やかな債券、あるいは、バランス型のファンドは、投資の入り口としても使えます。まして、年4%を超えるような利回り(現地通貨建て)が期待できるのですから、利回りだけでも投資の魅力を伝えられます。お客様にリスクとリターンの関係を理解していただくという点でも、株式ファンドだけではなく債券ファンドやバランスファンドの活用は有効です。
私ども運用会社は、商品の提供を通じて「新NISA」の発展に貢献するというのが第一義です。既存商品については、「隔月分配」のコースを設けるなど制度要件に適った商品になるように見直しも実施します。販売会社の方々とよく打合せをし、個々の販売会社のお客様のニーズなどを尊重した商品を提案していきたいと考えています。