投資信託などの運用を行う資産運用会社は、現在、国内に300社以上存在する。証券会社や銀行、保険会社といった大手金融機関の関連会社が多く、外資系や独立系などが続く。国内の運用会社は、まず証券会社の子会社として設立されたという経緯があるからだ。

こうした状況は、日本でこそ当たり前ではあるが、欧米の事情は少々異なる。欧米の運用会社は歴史が古く、証券会社よりも先に存在していたところも多い。つまり、創立した時点から独立系なわけだ。そのため、欧米では広く知られていても、日本では金融業界以外ほぼ無名に近い、という運用会社は少なくない。

しかし、歴史のある海外の運用会社には長年にわたる資産運用で培ったノウハウがあり、その理解を深めることで、個人投資家の選択肢は確実に広がるはずだ。そこで、そうした国内外での知名度に大きなギャップのある、運用会社を紹介していこう。

「成長株投資の祖」が設立したティー・ロウ・プライス

投資信託の評価機関であるモーニングスターは、優れた運用実績を残した投資信託を「ファンド オブ ザ イヤー」として毎年表彰している。2020年度は部門ごとに合計37本を選出したが、優秀ファンドに、ティー・ロウ・プライス・ジャパンが運用する「ティー・ロウ・プライス 世界厳選成長株式ファンドBコース(資産成長型・為替ヘッジなし)」と「ティー・ロウ・プライス 米国成長株式ファンド(愛称:アメリカン・ロイヤルロード)」が選ばれていた。この「ティー・ロウ・プライス」という名称に、あまり馴染みがないという個人投資家は多いかもしれない。

ティー・ロウ・プライス・ジャパンの母体であるティー・ロウ・プライス社は、1937年に米国で設立された独立系の資産運用会社。すでに80年以上の歴史があることになる。運用資産残高は、2021年3月末時点で約1兆5200億ドル(約168兆円)と世界トップクラスの規模。国内のETFを含む公募投資信託全体の残高が150兆円ほどであることを考えると、ティー・ロウ・プライスの残高の大きさが分かる。また、米国のナスダック市場に上場しており、主要な株式指数であるS&P500にも採用されている。

ティー・ロウ・プライスという社名は、創業者であるトーマス・ロウ・プライス Jr. (以下、T.R.プライスJr.)。が、会社設立時に自分の名前を冠したことによる。それ以来、社名は変わっていない。これは、会社の経営理念も変わっていないことを意味している。

トーマス・ロウ・プライス Jr.

T.R.プライス Jr.は、資産運用の世界では「成長株投資の祖」と呼ばれている。そもそも「成長株」とは会社の売上高や経常利益などの業績が良好で、株式市場での株価の評価も高く、さらに業績、株価ともに成長が見込める銘柄のこと。「グロース株」という言い方もよくされる。また、成長株とは対照的に使われる用語として「割安株」がある。業績や財務内容が良いにもかかわらず、株式市場での評価が低く、株価が割安に放置されている銘柄だ。「バリュー株」と呼ばれている。