2月15日、日経平均株価が30年ぶりに3万円台に乗せ、株価の先行きに対する関心が高まってきています。
株式に投資している人であれば、株価の上昇、下落で保有資産に損益が生じるので、それは当然のことなのですが、株式投資によって得られる収益は売買益だけではありません。株式投資関連のサイトには、「今日の急騰銘柄」といった記事が掲載されているため、株式投資にはどうしても値上がり益でリターンを得るというイメージがつきまとうのですが、株式投資にはもうひとつ、「配当金」というリターンがあります。2021年1月時点で、配当金を出している企業の平均配当利回りは、東証1部上場企業で1.92%、2部上場企業で2.23%です。
定期預金の利率が年0.002%という時代ですから、2%前後の配当利回りでもまあまあ魅力的なのですが、やはり「株価10倍」に比べればインパクトは小さいせいか、株式に投資している人の多くは売買益を重視する傾向があります。
連続増配の効果を具体的に検証してみると……
そんな中で、東証1部上場企業である花王が、2月3日に「2021年12月期の配当を前期比で増配する」という予想を発表しました。
あくまでも2021年12月期の予想なので、これから約11カ月の間に花王の収益に大きなダメージが及ぶような事態に直面すれば、配当金の額が据え置かれるか、もしくは減配されることも考えられますが、特に大きな環境変化が無ければ2021年12月期の配当も増配となり、実に32期連続増配になります。今の日本企業で、これだけ長期にわたって増配を続けてきた会社はありません。
2021年2月19日時点における花王の株価は、終値で7435円です。2021年12月期の配当金が予想通り、1株あたり144円(中間配当72円、期末配当72円)となり、かつ株価が現在の水準近辺だとしたら、配当利回りは1.93%です。前述した平均的な水準であり、これでは食指が動かないという投資家もいるでしょう。
でも、連続増配は後々、その企業の株式に長期投資した時に、ポートフォリオの収益率に大きなインパクトを与えます。
花王の配当金を事例に挙げて考えてみましょう。
32期連続増配ということは、2021年から遡ること32年前の花王の配当と株価はどうだったのでしょうか。32年前ですから、バブルのピークだった1989年になります。当時の花王の配当金は、1株あたり7.1円でした。当時は3月決算だったので、1989年3月末の株価を見ると1690円。ということは、当時の配当利回りはわずか0.42%でした。配当利回りは、今よりもはるかに低かったのです。
しかし、このときに花王の将来性をしっかり理解したうえで、同社の株式に投資をしていれば、今ごろは非常に高い配当利回りが得られているはずです。
実際に計算してみましょう。花王の株式をバブルピークに近い1989年3月末に、1株=1690円の株価で投資し、それから今に至るまでずっと保有し続けたとしたら、現在の配当利回りは何%になるでしょうか。2021年12月期の予想配当金が144円ですから、配当利回りは8.52%にもなります。
あるいは、株価が本格的な下降局面に入った1990年3月末だったらどうでしょうか。花王の株価は1350円に下げているので、配当利回りは10.66%に上昇します。確かに配当利回りベースの投資は地味ですが、長期的に増配を続けていく企業を見つけて投資し、長期保有に徹すれば、いずれ高い配当利回りに育つ可能性も十分にあるのです。