iDeCoは節税メリット大 ただし、途中でお金を引き出せないことに注意を

確定拠出年金は会社や加入者が掛金を拠出し、加入者が自己責任で運用商品を選んで運用し、その運用結果によって将来年金を受け取るという、私的年金制度となります。iDeCoと企業型確定拠出年金がありますが、選択した商品とその運用結果によっては高いリターンを期待できる一方、元本割れすることもあります。

そのうちiDeCoは個人事業主、専業主婦、公務員、私立学校教職員、企業型確定拠出年金に加入していない会社員などを対象とした制度で、個人で加入し、加入者が掛金を拠出することになります。現行制度上、加入は60歳までできます。

公的年金の被保険者の種別や他の年金制度の加入有無によって掛金の上限額が異なりますが、個人事業主など国民年金第1号被保険者は最大で月額6万8000円、年額81万6000円拠出することができます。掛金は小規模企業共済等掛金控除としてその全額が控除対象となりますので、民間の個人年金と比べると、節税効果も大きいものとなります。さらに、運用益も非課税です。

ただし、加入して掛金を拠出してから解約することはできず、60歳を迎える前に急な資金が必要になった場合に、運用しているお金を引き出して使うことができません。

iDeCoの改正とその注意点

法改正により、2022年5月以降、60歳未満の人だけでなく、60歳以上65歳未満の人も国民年金被保険者であればiDeCoに加入することができるようになります。もちろん運用結果に影響されますが、拠出できる期間が長くなると、将来受け取る年金を増やすことも可能となります。

しかし、現在滝沢さんは、国民年金に第1号被保険者として加入中で、このまま60歳になるまで国民年金保険料を納付すると、65歳から満額の老齢基礎年金(2020年度:年額78万1700円)が受けられることになる一方、20歳から60歳になるまで480月納付期間があるため、60歳以降国民年金の任意加入被保険者にはなることができないことになります。従って、滝沢さんは60歳まで15年はiDeCoに加入できることになりますが、60歳以降国民年金の任意加入によってのiDeCoへの加入はできませんので注意が必要です。

では、このような場合に60歳以降にiDeCoに加入する方法はないでしょうか。国民年金の第2号被保険者になれば60歳以降65歳になるまでiDeCoに加入できるようになります。厚生年金の被保険者でもある国民年金第2号被保険者は会社員や公務員を主に指しますが、会社から役員報酬を受け取る会社経営者も該当します。現在、滝沢さんは個人事業ですが、個人事業から会社組織に法人化すれば、第2号被保険者となり、65歳までiDeCoに加入することも可能となります。同時に、公的年金の老齢厚生年金も増やすことができ、公的年金も2階建ての保障となります。注意点としては、第2号被保険者になるとiDeCoの掛金上限は月額2万3000円(年間27万6000円)になりますので、この点を考慮しないといけません。法人化により企業型確定拠出年金の加入対象にもなれますが、企業型の導入次第で掛金上限額もさらに変わりますので、その点について考える必要性も出てくるでしょう。

また、法人設立については費用がかかり、公的年金保険料は定額の国民年金保険料ではなく、報酬に応じた厚生年金保険料に変わり、事業の利益に対してかかるのは所得税ではなく、法人税となりますので、事業の今後の状況も見ながら、法人化の検討が必要でしょう。