共働き夫婦とシングルが陥りやすい「老後の落とし穴」

――確かに、退職金はなるべく手を着けず、将来のためにキープしておきたいですね。さて、鈴木さんがよくおっしゃっているのが、「配偶者が専業主婦(夫)」「夫婦共働き」「シングル」といった自分のライフスタイルを踏まえて状況を把握することの大切さです。そこも詳しくお教えください。

統計データを見ると、ほとんどが「配偶者が専業主婦」のケースになっています。これは、昔の統計に夫婦共働きやシングルというデータがないことが原因のようです。日本の代表的な家庭といえば、長きにわたって「サラリーマンの夫と専業主婦の妻」だったのですが、2000年頃に夫婦共働きが数の上で逆転し、今ではこちらが主流になっています。

ダブルインカムだと、収入が多いがゆえに消費が膨らみ、高止まりした消費生活を定年後にも持ち込みがちです。さらに、共働き家庭がリッチなのは夫婦共に存命の間だけ、ということも知っておき、老後に備えて意識を変えていったほうがいいでしょう。

仮に共働きの妻だけが残された場合、夫の老齢基礎年金分はもらえなくなりますし、遺族厚生年金は妻の老齢厚生年金と比較して上回る部分のみが妻の厚生年金に上乗せされるだけです(遺族厚生年金は①夫の厚生年金の4分の3➁夫の厚生年金の2分の1と妻の厚生年金の2分の1――のいずれか多い方)。世帯としての年金収入のダウンは避けられません。

また、シングルだと、将来の生活費を「夫婦2人家庭の半分で済む」と考える方も多いようです。しかし、家賃や光熱費など、家に人が複数いるほうが効率のいい出費も多く、実際にはシングルだと夫婦2人家庭の6割程度の支出が発生します。そこには注意が必要です。