投資家の違和感をよそに進む「コロナバブル」化

2020年2月24日、史上最高値を更新したわずか一週間後にNYダウが大暴落したその日を境に、それまでの緩やかな上昇基調の中でぬるま湯に浸っていた世界の投資家は、突然の乱高下に困惑するようになりました。相場には夜明け前が一番暗い、という格言通りなのか、3月23日の「もう何度目だろう……」という大暴落の翌日、24日の下落でNYダウは一旦底を打ち、そこから現在(執筆時点6月30日)に至るまで劇的な回復と上昇を見せることになります。

この数カ月の市場の上昇は、痛手を被った多くの投資家にとって良い結果をもたらしました。しかし、その株価上昇は明らかに悪化していく実体経済の状況に逆行したもので、大きな下落の到来への警戒感も強く、多くの市場参加者が違和感を覚えていました。

ところが、二番底への警戒感が強く残る中でも株価の回復は進み、さらに弱気派の買い戻しと上昇に乗り遅れまいとするマネーの流入によって不況下の株高は過熱感を帯び、ついには「コロナバブル」と呼ばれるようになってしまいました。

このような局面になると、つい「ここからひと山当てられるのでは!?」と心が浮ついてしまうものですが、「陶酔の中で相場は天井を打つ」と言われています。つまり、バブルは全員参加によって最後を迎えるものなのです。

現在の局面で、わたしたち投資家にとってどのような投資行動や判断が「正解」になり得るのでしょうか? 本稿では、私が実際に担当させていただいた富裕層顧客の過去の事例を通してその考え方を検証してみたいと思います。

富裕層の資産運用は、点でなく線で考える

結論としては、そこからは大きく3つの鉄則が浮かび上がってきました。

・資産運用は、点ではなく線で考える ・投資判断は数字を見て行う ・資産運用においてぶれないスタンスを持つ

私が見た実際の富裕層の資産運用「3つの鉄則」、その1つめは「資産運用は点ではなく線で考える」ということです。

ここで言う「点」とは、現在、またはある投資判断をする瞬間など、資産運用中のある短い局面を意味しています。一方、「線」とは、点という毎日が将来に向けて連続している時間軸のことです。つまり、資産運用はその時々の状況だけを見て判断するのではなく、過去から将来につながっていく時間の連続性の中で判断している、ということです。過去を見て、今を見て、将来の先を考える、ということです。

今回のような違和感を覚える上昇局面で実際にお客さまは何をしていたのかというと、そのミニバブルが弾けて市場が下落したときに取るべきアクションを考えていました。つまり、次の上昇局面で有望な投資先を検討していたのです。例えば、割安なタイミングで社債をすぐに買えるように、破綻リスクが小さそうな優良企業をあらかじめ探しておこう、とか、世界経済のけん引役となるであろう米国株式を買い増ししよう、といった感じです。

逆に、そのような上昇局面で保有資産の利益を確定させ、次の投資のための資金を準備しておくといったことも重要です。判断に迷う場合は、もし本格的な下落局面になった際に、保有資産の中で下落率が大きくなりそうな投資先から換金しておく、といった考えも有効です。

資産運用におけるベストなタイミングを常に捉えることは不可能ですから、お客さまは先を見据えて余裕を持ち、時に思い切った判断をされていました。その際、1年間くらいの主なイベントとそれに伴うリスクを大まかに整理していました。

今であれば、米中関係の政治リスク、秋の米大統領選、新型コロナウイルスの第2波の影響などが考えられます。想定外のリスクが顕在化した際の市場のショックは大きいですが、このようなイベントリスクが次のショックの引き金となり得ると考えられる場合は、今の投資内容を見直すタイミングかもしれません。