高市首相「私はリフレ論者ではない」の真意

以上のように、今回の9月MPMでは、声明文の段階から(日銀としては)タカ派色の強いメッセージを出していました。にもかかわらず、市場(特に為替市場)は利上げへの反対票2票(浅田統一郎審議委員、佐藤綾野審議委員)に驚き、MPMの結果をハト派的と受け取りました。

もっとも、反対した2人は高市政権が送り込んだリフレ派の審議委員であり、利上げに反対するのは予想の範囲内です。しかも、政策委員は全員で9名おり、反対票が2票出ても利上げの決定自体に大きな影響を及ぼすことはありません。

筆者の感覚からすると、MPM直後の円安は明らかに市場の過剰反応ですが、この過剰反応が思わぬ副産物を生むことになります。それが高市政権の反応です。

9月23日に放映された静岡朝日テレビの『とびっきり!しずおか』という番組に片山さつき財務相が出演した際、「高市総理から『私はリフレ論者ではないから、それを言って』と言われた」と発言したのです(図表5)。

<図表5  9月23日静岡朝日テレビ『とびっきり!しずおか』での片山財務相の発言>

(出所)静岡朝日テレビニュース、楽天証券経済研究所作成

 

この片山財務相の発言が、9月MPMでリフレ派審議委員の反対票が円安を呼んだことが背景にあるかどうかは、推測の域を出ません。

しかし、25日に行ったベッセント米財務長官とのオンライン協議でも「円の過小評価は問題という点を再確認した」と発言していることから、政府が円安を相当問題視していることは確かでしょう。

城内実経済財政相「リフレ政策は終わっている」

さらに、その25日には城内実経済財政相も閣議後の記者会見で、「リフレーション政策の局面は終わっている」と発言しました(図表6)。

 

<図表6  9月25日閣議後の記者会見での城内経済財政相の発言>

(出所)内閣府、楽天証券経済研究所作成

 

要人たちの発言が日銀利上げに与える影響

こうしたことを踏まえると、永田町(官邸)から本石町(日銀)に吹く風当たりは、劇的に弱まっている可能性があります。

もちろん、これら一連の発言が何を意図したものか、どこまで本気なのかは、政府による今後の政策対応や政府高官の言動を通じて判断していくしかありません。ただ、風当たりが弱まっているという読みが正しければ、日銀は今後も利上げを粛々と進める可能性があるでしょう。

ただ、繰り返しになりますが、日銀は今のところ0.5%の利上げや連続利上げまでは考えておらず、次回の利上げは0.25%の幅で今年12月(もしくは来年1月)、その後は7月MPMまでを目途にもう一度利上げを行って、政策金利を1.75%に持って行くのではないでしょうか。

その水準がターミナルレート(利上げの最終到達点)になるかどうかは、高市首相の「私はリフレ論者ではない」発言がどこまで本気かにかかっています。無論、高市首相が何と言おうと、本当に必要なら利上げをすれば良いのですが、実態はなかなかそう簡単にはいきません。

来年7月23日には、利上げ推進派の高田創審議委員、田村直樹審議委員が退任し、新たな審議委員2名が着任します。そこでまた高市首相がリフレ派を送り込むのかどうか。

新体制になっても経済・物価指標に依拠した冷静な判断が政策委員会としてできるのなら、来年の政策金利2%もあり得るとみています。