23日に伝わった高市首相の「私はリフレ論者ではない」発言や、そして25日の城内経済財政相による「リフレ政策は終わっている」発言など、このところ、日銀の利上げに対する政府の風当たりが弱まっているように見えます。果たして日銀は10月も連続利上げをするのでしょうか。金融政策決定会合の声明文や植田総裁の記者会見から読み解きます。
※本稿は、9月30日に「トウシル」に掲載された人気エコノミスト愛宕伸康氏の記事「高市首相「私はリフレ論者ではない」発言の真意…日銀の「利上げペース」に影響?」を抜粋・編集しています。
日本銀行の12月利上げに向けた明確なメッセージ
日本銀行は、9月17~18日に開催した金融政策決定会合(MPM)で、予想どおり3カ月振りとなる利上げを決定しました。加えて、再び3カ月後に利上げを行う可能性が高いとの明確なメッセージを声明文に残しています。それは7月MPMから踏襲された2つの文章です。
まず1つ目は、物価に関するリスク文言、「2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」です(図表1)。
<図表1 9月の声明文でも踏襲されたリスク文言>
6月MPMの声明文、7月の「展望レポート」に続き、この文言が今回の声明文でも掲載されました。これは日銀の物価上振れリスクに対する危機意識が変わっていないことを示しており、利上げペース(3カ月に1回)も変わらないことを示唆しています。
2つ目は、7月の「展望レポート」で『とくに、』とわざわざ強調して挿入された、利上げペースに関する文言です(図表2)。
<図表2 9月の声明文でも踏襲された金融政策運営の文言>
これも一言一句変更されることなく、今回の声明文に記述されました。このことは、金融政策の重心が物価上振れリスクを意識した利上げに移っていることを示唆しています。
どういうことかというと、まず文章の前半部分、「基調的な物価上昇率が2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう」は、「ビハインド・ザ・カーブ(利上げが後手に回ること)に陥らないよう」に書き換えが可能です。日銀がビハインド・ザ・カーブを意識しているのは確かでしょう。
また、後半部分の「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」は、金融政策のフェーズがすでに2%を目指す局面から、2%に抑える局面に変わっていることを示す、言わば利上げが近いというメッセージです。この点、後述する植田総裁の記者会見でも「局面が変化した」という表現を使って説明しています。
9月利上げ後の総裁記者会見のポイント
その植田総裁の記者会見ですが、重要なポイントは大きく2つあります。ひとつは、上述した「政策の局面が変化した」という発言です。そしてもうひとつは、0.5%のような大幅利上げや、連続利上げの条件に関する発言です。
(1)「金融政策の局面が変化した」
まず、「政策の局面が変化した」という発言は、図表3に掲載したとおり、声明文にある「基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になる」を説明する流れの中で出てきた発言です。
<図表3 9月利上げ後の総裁記者会見での発言~政策の局面が変化した~>
その後の説明にもあるとおり、「上下のリスクに対称的に反応しないといけない」は、いかにも慎重な植田総裁らしい表現です。ただ、2%を目指してきたこれまでと比べ、重視するリスクのウエイトが物価上振れ方向に移った、つまり軸足が利上げ方向に傾いたことを意味しています。
(2)「大幅・連続利上げの条件」
しかし、金融政策の軸足が利上げ方向に移ったといっても、0.5%の大幅な利上げや、毎回のMPMで利上げを行う連続利上げまで考えているかというと、植田総裁はそれを明確に否定しています。
図表4にまとめましたが、0.5%利上げや連続利上げを行う状況について植田総裁は、「物価が目標を超えて、ものすごい上がっていくというリスクが高いか、あるいはすでに、目標を超えちゃっているかに依存する」と説明し、そのうえで2022年~23年の米国や欧州の例を引き合いに出しています。
2022年~23年の欧米といえば、物価上昇率が想定以上に高まり、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が大幅な利上げを余儀なくされた、ビハインド・ザ・カーブの典型例でした。つまり、植田総裁は、ビハインド・ザ・カーブのリスクが顕在化しなければ0.5%利上げや連続利上げはないと言っているわけです。
<図表4 9月利上げ後の総裁記者会見での発言~大幅・連続利上げの条件~>
そして、それに続けて現在はそうした状況ではなく、今後もそうならないと述べているわけですから、今後の蓋然性の高いシナリオとして、「3カ月に1度0.25%の利上げ」が声明文や総裁記者会見から発せられたメッセージということになります。
