今にも崩れそうな状態の空き家があった

理恵さんの話を聞くと、詐欺だと思っていたあの封筒はどうやら本物で、対応が必要だったようでした。

福井の役所が言っている「空き家」とは、健一さんの祖父の勇さんが、終戦後に満州から福井県に引き揚げた後、すぐ建てたものでした。勇さんは1920年生まれ、家を建てたのは26歳の時だったそうです。

その後勇さんは、3歳下の祖母のシヅさん(仮名)と結婚した後、30歳になるタイミングで東京へと移住しました。以降、福井の家はずっと空き家となっています。

勇さんは、健一さんの父にあたる清さん、叔母にあたる長女の明美さん(仮名、70歳)、そして次女の京子さん(仮名、68歳)と3人の子供をもうけましたが、1995年に死去しています。この時健一さんはまだ中学生でした。

健一さんの母・恵美子さんは2010年に、1953年生まれの父の清さんも、71歳だった2024年にこの世を去っています。

1946年の秋に建てられた木造平屋建ての家は、長年手入れされておらず、今にも崩れそうな状態となっていました。それで役所の担当者が連絡してきたのです。

土地の所有者は別にいたのですが、この空き家を解体しようと思い、市役所の窓口に相談したそうです。その後、建物の登記情報を調べて、子孫の健一さんと理恵さんにたどり着き、連絡に至ったようです。

「解体費用は誰が負担するんだろう」

祖父が満州に出向いていたことは本人から聞いていたものの、福井県に家があったことすら、健一さんも理恵さんも初耳でした。

事情が分かったあと、健一さんの脳裏に「ある不安」がよぎりました。

「空き家の解体費用は誰が負担するんだろう。まさか、自分のところに請求がくるんじゃないだろうな……」

健一さんはふと疑問を覚え、知り合いの行政書士に聞いてみました。

すると、恐ろしいことが分かったのです。

●健一さんは解体費用を負担しなければならないのでしょうか。後編【「空き家の解体費用」として500万円請求されることも…役所からの「空き家についての通知」を絶対に無視してはいけない理由】では、相続した空き家の売却にかかわるトラブルを解説します。

 

※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。