<前編のあらすじ>
萩原真一は39歳。埼玉県の物流企業で働いている。
仕事ぶりは真面目だが、人間関係が苦手で、趣味のゲームに没頭して暮らしてきた。そのためか、40代を目前にしながら独身のままだった。
ただ、実家からのプレッシャーもあり、そろそろ結婚したいと考えていた。
結婚相談所に登録しようと、港区のオフィスを訪れたところ、カウンセラーから厳しい批評を受けてしまう。
ただ、真一のほうにも言い分があった……。
●前編:【「低層階の人間は牛肉も食ったことがないのか?」タワマン最上階のイケイケ経営者が低層階在住のIT企業勤務男性を罵倒した理由】
「お言葉ですが」
「お言葉ですが」
萩原真一はテーブルの下で手を握りしめていた。
長瀬というカウンセラーの言うこともわからなくはなかった。人の好き嫌いの問題だから、やっぱりある程度人気が集中する人と、そうでない人がいるのは分かっている。
――そうは言っても、何もあんな言い方をしなくても……。
そもそも、希望相手の条件はそんなに深く考えたものではなかった。いろいろ相談しながら細かく決めていこうと思っていただけだ。
年齢の条件についても、どうしても20代でないとダメというわけではなかった。本音では同年代くらいでいいとも思っていた。
でも、初っ端からあんな言い方をされると、相談の余地がまるでないように感じた。あたかも自分が20代しか探していない、偏った好みの持ち主、もしくは、よほどの世間知らずのように決めつけられた気がした。
それに、まだ年収と年齢の話しかしていない。結婚して長くつきあっていくなら、性格や価値観の相性こそ大事なはずだと思った。
そういう人間性の部分を無視して、スペックの話だけ進めていくことに強い違和感を感じたのだった。
開口一番、頭ごなしに𠮟られたことも不愉快だった。
萩原真一はその思いを、つい、言葉にしてぶつけてしまったのだった。
