<前編のあらすじ>

44歳の海野康平は品川にあるIT企業で事業部長を務めている。家族は妻・真奈美と、小学生の娘2人とともにタワマンで暮らしている。

タワマンに住む富裕層と接近して、仕事に活かす目的で、康平はタワマン内のイベントに積極的に参加していた。

タワマンで催されたバーベキューを手伝ってステーキを焼いていたが、サングラスをかけた50代の男性から、肉が生焼けだとクレームを受けた。

男性から投げつけられた暴言に、怒り心頭の康平だったが……。

●前編:【「低層階の人間は牛肉も食ったことがないのか?」タワマン最上階のイケイケ経営者が低層階在住のIT企業勤務男性を罵倒した理由】

「あの有名ハンバーグチェーンの?」

バーベキューの片付けを終えた康平は、帰宅してシャワーを浴びると、早速妻の真奈美に、サングラスの男との一件を話し、不満をぶちまけた。

「肉は本当に生焼けじゃなかったってこと?」

真奈美の質問に、康平はうなずいた。

「生焼けじゃないよ。真っ赤じゃなくて、ちゃんと加熱されてピンク色になっていたからね。もともと、すぐ火が通りそうな薄い肉を使っていたし。それに、他には生焼けだっていうクレームは一つもなかった」

「なるほど。で、あなたを馬鹿にした人はどんな人だったの?」

「50代くらいかな。サングラスをかけていた。髪は白髪まじりのロマンスグレー。背が高かった」

真奈美はうんうんと頷きながら聞いていたが、何かに気づいたらしかった。

「もしかしたら、その人、有名な人じゃないかな」

「有名な人?」

「うん。このタワマンの最上階に、南條修さんが住んでるって、聞いたことがあるから」

「南條修って、あの有名ハンバーグチェーンの?」

康平は驚きのあまり、あんぐり口をあけてしまった。