義母から渡された「お小遣い」

しばらくして伊織はお手洗いに向かうために居間を出た。用を済ませてトイレから出ようとすると、ドアの前で一恵と麗香の話し声が聞こえてきた。

「はい、これ。いろいろと必要でしょ?」

「えっ、でも、この間もいただいたばかりですし……」

「いいのよ。子どもがいると何かとお金がかかるでしょ。夏休みだから出かけたりもするでしょうし、これで美味しいものでも食べなさい」

「はい、ありがとうございます」

会話が終わるまで伊織は息を殺していた。しばらくすると一恵が居間に戻っていく気配がした。伊織は少し待ってからドアを開けると、廊下にはまだ麗香が残っていた。どうしても今のやりとりが気になり、伊織はその場で麗香に声をかけた。

「麗香さん、ちょっといい?」

「はい?」

伊織は周囲に一恵がいないことを確かめてから小さな声で尋ねた。

「麗香さん、さっきお義母さんから何かもらってたよね?」

ぶしつけな質問だと分かりながらも、どうしても確かめたかった。すると麗香は照れくさそうに笑った。

「ああ、はい、お小遣いをいただいてたんです。いつも断ってるんですけど、お義母さんが持っていきなさいって聞かなくて」

「……いつも?」

「はい、お会いするたびにいただいてました。最近は由美のこともあるからか、仕送りみたいに送ってくださることもあります」

麗香はそこまで話したところで伊織の表情が硬くなっていることに気づいた。