投資信託の良しあしを見定めるのは難しい。相場つきが悪くて短期的には成績が振るわなくても、長期で見れば優れた運用を行っている投信は存在する。逆に、波に乗って一時的に好成績を収めたものの、トレンド転換と共に一気に沈んでいく投信も少なくない。本シリーズ「探せ! あなたの“推し”投信」では、長期投信投資家に人気の投資信託の強さの秘訣を探る。
今回取り上げるのは、フィデリティ投信が設定する「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」だ。8月31日時点で純資産総額は7583億円、基準価額(分配金再投資)は7万1000円を超えている。なぜこれほど支持されているのか? 本稿ではその理由をひも解いていく。
「米国リート」の優位点はどこにある?
はじめに前提を整理しておきたい。リート(REIT)は、投資家から集めた資金で商業施設やオフィス、住宅、物流施設などを保有し、賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みで、株式と同様に取引所に上場している。
同じリートでも、日本のJ-REITと米国リートでは市場の姿がかなり異なる。米国は世界のリート市場で最大の規模を持ち、オフィスや商業施設に加えて、データセンター、通信塔、倉庫、ヘルスケア施設、林業地といった、日本にはほとんど上場例のないセクターがそろう。保有不動産の入居率は長期平均で93%台、直近も94%前後で推移しており、長期の賃貸借契約を基盤とする収益構造が特徴だ。一方で、賃料は米国景気に、価格は米国金利に強く連動する。
本ファンドの特徴を一言でいえば、「米国リートに絞り、成長セクターに重点を置いた選別型ポートフォリオ」ということになる。設定は2003年12月9日、運用歴は20年を超え、国内で設定された米国リート型ファンドとしては最大規模にある。資産別組入は2026年6月末時点でリートが98.7%で、実質的にほぼ全額が米国リートだ。分類としては米国リートを投資対象とする「その他」に該当する。
運用はアクティブ型。ファミリーファンド方式を採り、マザーファンドの運用指図権限は米国のFIAM LLCに委託されている。リート専任の調査・運用スタッフによる分析に、米国および世界の主要拠点の株式アナリストによる企業調査情報を組み合わせるボトムアップ・アプローチで、長期的に潜在成長性の高いリートを選定する。ベンチマークはFTSE NAREIT Equity REITsインデックス(税引前配当金込/円ベース指数)で、これを上回る配当利回りを目指す。なお目論見書には、ファンドのパフォーマンスは指数との連動を目指すものではないと明記されている。
その選別の結果として、中身は「米国不動産の縮図」ではなく、米国不動産の成長を追う形となる。2026年6月末の業種別組入比率は小売25.5%、データセンター19.0%、ヘルスケア16.2%、物流15.4%、住宅15.1%で、上位5業種が9割超。指数に含まれるオフィスやホテル・リゾートは、組入業種としての記載がない。組入銘柄はウェルタワー、エクイニクス、プロロジスが各9.8%で並び、以下デジタル・リアルティー・トラスト6.3%、サイモン・プロパティー・グループ6.1%、ベンタス4.5%、キムコ・リアルティー4.1%、UDR3.9%、パブリック・ストレージ3.7%、リアルティ・インカム3.6%と続く。AI関連需要のデータセンター、高齢化のヘルスケア、EC拡大の物流に賭ける構成で、アクティブ運用としては銘柄の入れ替えを通じて中身が動くこと自体が織り込み済みの仕様といえる。
コースは為替ヘッジありのAコースとヘッジなしの本Bコースがあり、販売会社によってはスイッチングも可能。決算は毎月15日の年12回。そのほか、年1回決算の資産成長型(C・Dコース)、並びに、ヘッジなしの隔月決算型も用意されている。
なお、A、BコースはNISAの対象ではないが、C、Dコースおよび隔月決算型はNISAの成長投資枠の対象となっている。
巨大な米国の不動産マーケットに投資信託を通じて投資できるメリットは大きく、国内の不動産投資とは違うリターンの源泉があることも特徴だろう。なお、当ファンドを運用するフィデリティ投信はモーニングスター・アワード2026において、最優秀運用会社に選ばれていることも補足しておきたい。
