啓子は朝食をテーブルに置くと、リビングを出て一人娘の未来の部屋に向かった。起きるようにと何度も声をかけていたが、一向に未来が部屋から出てくる様子はなかった。ノックをしてドアを開けると、案の定、未来はベッドの上で気持ちよさそうに寝ていた。

「未来、早く起きなさい。朝ご飯作ってるから」

しかし未来は寝たままこちらに背を向け、起きるのを拒んだ。

「まだいい。夏休みなんだからもうちょっと寝かせてよ」

夏休み中の娘に手を焼く母

未来とは最近、ずっとこのやりとりをしている。11歳で小学5年生の未来は現在、夏休みの真っ最中だ。学校がないからゆっくりしたい気持ちは分かるのだが、生活リズムが乱れると、2学期が始まるときに苦労すると分かっていたので、毎朝8時前には起こすようにしていた。

「今日も利香ちゃんたちと遊ぶんでしょ? だったら早めに起きないと」

「昼からだからいいの」

「じゃあ午前中に宿題をやっちゃいなさい。毎年、ギリギリになってやってるんだから。今年はもう私もお父さんも手伝ったりしないからね」

啓子がそう言うと、未来は観念したのか、ゆっくりと起き上がり、重そうな体で部屋を出ていった。

啓子は未来が朝食を食べている間に、出勤の準備をしようと思って廊下を歩いた。夫の洋介は先に出ていて、あとは朝食の片づけをして自分も出勤するだけだと考えていた。するとトイレから出てきた義母の吉枝と出くわした。

吉枝はもともと義実家で暮らしていたが、啓子と洋介が家を建てるときに同居しようという話になり、現在は一緒に暮らしている。吉枝が夫を亡くしたこともあり、啓子としても同居を始めるのは当然のことだと思っていた。

「未来、ちゃんと起きてくれたようね」

「ええ。いつもてこずってますけどね」

啓子が苦笑すると吉枝は頬を緩ませた。

「あとは私がやっておくから、啓子さんは自分の準備をしてちょうだい」

「すいません。いつもありがとうございます」

「いいのよ。住まわせてもらってるんだから、これくらいはやらないとね」

そう言うと吉枝はリビングに向かって歩いていった。吉枝と同居するようになってから家事を分担できるようになって本当に助かっていた。啓子は吉枝への感謝の気持ちを持ちながら、出勤の準備のために寝室へと向かった。