税制上有利なのはどちら?
両者とも運用益については非課税です。iDeCoの特徴は、拠出時に掛金が所得控除になり所得税等が減少する可能性があること、その代わりに受取時に一時金の場合は退職所得、年金の場合は雑所得として課税される可能性があります。一方でNISAの特徴は、所得控除はありませんが、受取時の課税もなく、非常にシンプルです。
ひろみさんの60歳から5年間は、給与所得がありますので、所得控除が得られるiDeCoのメリットが大きいと考えられます。そして65歳時に一時金を取得した場合は、退職所得として課税されますが、新たに5年の加入期間が追加されますので、退職所得控除が利用できます。これらの効果を計算例で見てみましょう。
①所得控除による効果
年収が600万円ですので、所得税率(復興税・防衛税※込み)を10.21%、住民税率10%と仮定します。iDeCoの掛金上限は2026年12月以降、諸条件によりますが年間最大74.4万円となります。ひろみさんはこれを最大限利用できるものとします。年間の税軽減額は744,000円×20.21%=150,362円、5年分で751,810円となります。
※防衛特別所得税が2027年1月より導入されます
②退職所得による課税
5年後に一時金を受け取った場合を考えましょう。新たに拠出した部分のみに着目します。運用がうまくいき、掛金総額74.4万円×5年=372万円に対して、資産残高が410万円まで増えたとします。退職所得控除を40万円×5年=200万円とすると※1、退職所得は(410万円-200万円)/2=105万円となります。
所得税率(復興税・防衛税込み)は5.105%、住民税は10%と考えられるため、税額は105万円×15.105%=158,602円となります。
※1正確には移換したDCの加入期間等を考慮して算定されます。DCの加入期間が20年以上あれば、70万円×5年=350万円(概算)となる場合があります。
③差し引き
単純な税制メリットの額は①751,810円-②158,602円=583,208円となり、一定のメリットがあるといえます。ただし、運用成果がさらに良い場合ですと、課税対象額が増加するため、税制メリットの額は縮小する傾向があります。一方で、①で得た税の軽減額を運用することでこのメリットを拡大することが可能です。
これと同じ積立額を同じ運用方法でNISAを利用すると、①所得控除と②課税がなくなりますので、③差し引きメリットは発生しません。
このように、所得がある程度あって所得控除が活用できる場合は、税制的にはiDeCoが有利となるケースが多くなります。一方でNISAが有利となるケースは、資産運用がかなり良い場合や、収入がない(もしくは少ない)ケースで、③差し引きがマイナスとなる場合です。このようなケースが想定される場合は、iDeCoは避けた方が良いことになります。
ただし、以下に示すiDeCoの活用方法をするのであれば、あえてiDeCoを利用した方が良い場合があります。
運用しない場合でもあえてiDeCoを活用する
少し話がそれますが、第1の選択で、もし運用をやめることにした場合の対応でもiDeCoが活用できます。1点目は、運用しない場合でも上記説明の③差し引きメリットが得られます。iDeCoの商品には預金等がありますのでそれらを利用すれば良いのです。2点目は、ひろみさんの場合、退職一時金の受取りに退職所得控除をすべて使っていますので、DCを一時金で受給する場合は控除のメリットが低下しています。
iDeCoに加入すると、加入期間に応じた退職所得控除を新たに得ることができます。5年間加入すると、退職所得控除は少なくとも40万円×5年間=200万円となります※2。まだ受け取っていないDC1,000万円(iDeCoに移換済)と一緒に65歳で受け取れば、退職所得控除が200万円使えるため、何もしないより税負担が減ることになります。
※2上記※1と同じ
