社会のデジタル化が著しく進む昨今。今や高齢者でも各種のITデバイスを当たり前のように駆使している。
それにともない、近年、遺言を動画で残す高齢者もちらほら見るようになった。
だが、「動画の遺言」の存在が、逆に、相続を泥沼に導く落とし穴となることもあるのだ。
今回はある兄弟の実例を通じ、動画の遺言を残すメリット・デメリットについてぜひ知っていただきたい。
「遺産は半分ずつでいい」兄弟が交わしていた約束
今回、相続争いが起こったのは、兄・智徳さんと弟・拓海さんの兄弟だ。
兄弟の父親である剛士さんは、亡くなる10年ほど前から入退院を繰り返していた。特にここ数年は主治医から「いつ亡くなってもおかしくはない」と言われていたほど健康状態が悪化していた。
そんな父・剛士さんの病状を見て、智徳さんと拓海さんはいつしか相続についても話し合うようになっていた。
「揉めるのだけは嫌だな」兄の智徳さんが言った。
「そうだな。半分ずつでいいだろ」弟の拓海さんが半笑いで答える。
このときの二人は、比較的穏やかに話し合い、合意もとれていた。
それもそのはず。この兄弟は仲が良く、それまで喧嘩らしい喧嘩もほとんどしたことがなかった。
小学生のころに、おもちゃを取った取られたで少し喧嘩をしたことがある、という程度だった。
当然、この時、兄弟は父が動画で遺言を残していることも、この先大荒れの相続争いを繰り広げることになることも、全く予想していなかった。
