周囲からは「非の打ち所がない」と言われるが…
才佳は外から見れば良妻賢母ということになるのでしょう。
同期や部下からは「才佳さんはいつも明るくて気が利く上に人気女優似の美人。非の打ち所がないっていうのは才佳さんのためにある言葉だよな」などと言われますが、それは才佳のダークサイドを知らないからです。
中学、高校と同級生だった才佳の成績は、私より常に上でした。高校で同じクラスになった時も才佳はクラス委員長、私は副委員長と人望の面でも私を上回っていたのです。付き合い始めた頃に才佳が「将来はお母さんみたいな専業主婦になりたい」と話した時は、軽い謙遜か冗談くらいに思っていました。
確かに才佳には家庭的な面があり、誕生日やクリスマスのプレゼントは手編みのセーターや手製のクッキーなどが多かったように記憶しています。しかし、陸上部でも活躍していた文武両道の才佳なら、どんな方面に進んでも私以上に結果を残すに違いないというやっかみにも似た羨望がありました。
進学&就職の明暗と、25歳で仕組まれたプロポーズ
その後、才佳は東京の有名私大の英文科に進み、地元に戻って中学校の英語教師になりました。一方、一浪して才佳と同じ大学の経済学部に滑り込んだ私は、氷河期並みの就職難に直面して志望していたメガバンクや大手生保の入社試験に全滅し、地元の信用金庫にやっと拾ってもらったのでした。
女性の結婚年齢をクリスマスケーキにたとえるのは昭和時代の悪しき慣習と言われますが、地方では平成にも結構残っていて、才佳はやたらとそれを気にしていました。結果的に、才佳の気持ちを汲んで私たちが25歳になる就職2年目の年にプロポーズさせられました。「させられました」と言ったのは、後から考えれば、私が自主的に「した」というより、才佳から巧妙に仕向けられた印象が拭えないからです。
そして、プロポーズを受けた後に才佳はあっさり教職を辞しました。これには私だけでなく、私の親も慌てたようです。「才佳ちゃん、あんなに優秀なのに、本当に辞めちゃっていいの?」と何度も問い質されましたが、そんなことは本人に聞いてくれという話です。
