1枚のハンカチが宝物に
ひとしきりプレゼントを眺めたあと、遥香はハンカチの横にメッセージカードを並べ、スマホを手に取った。
「え、写真撮るの?」
「うん、お父さんに自慢しないと」
「やだ、恥ずかしいって」
実桜はそう言ったが、遥香はハンカチとカードを何度も写真に収めた。その様子を実桜が呆れた顔で見守っている。
「ちょっとお母さん、撮りすぎ。大げさだって」
「大丈夫。ちょっと自慢するだけだから」
遥香は笑いながら、夫へ写真を送った。すぐに既読がつき、短い返信が届く。
「お父さん、『実桜いいの選んだな』『お母さんっぽい』だって」
「やっぱり? 絶対これがお母さんに似合うと思ったんだよね」
褒められて嬉しかったのか、実桜はそう言って得意げに胸を張った。
今朝までのぎくしゃくした雰囲気が嘘のように、母娘の間には、いつもの気安い会話が戻っている。
「そっか。ありがとう」
「うん、大事にしてね」
「もちろん」
ハンカチをそっとダイニングテーブルに置き、遥香はふと口を開いた。
「でも、これ、もとはお母さんが渡したお金だけどね」
「でも選んだのは私だから」
すぐに返ってきた言葉に、遥香は思わず吹き出した。
テーブルには、開いた紙袋とハンカチ、実桜の丸文字が残る小さなカード。淡い刺繍が、部屋の明かりを受けて、ほのかに輝いているように見えた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
