新年度の嵐と体調の悪化
毎年、新年度を迎えた4月は成美たちの仕事が一気に増える時期だ。その日も朝から代表電話は、ずっと鳴りっぱなしで成美はその対応に追われていた。
内容は担当者変更の挨拶をしたいというものや研修や入社式関連の問い合わせだ。それらをすべて成美は担当の部署の人間に取り次ぎをしないといけない。
「成美さん、来週月曜の10時から使う予定の第3会議室って、外部講師の方の控え室でしたっけ?」
別の電話対応をしていた陽奈に聞かれて成美はすぐにパソコンの予定表を確認した。
「えっとね、研修用で使うのが第3で、控え室は第2会議室になってるわ」
成美は声を落として陽奈に教える。聞いた陽奈はすぐに明るい声で電話の相手に説明をしていた。
予定表を閉じた瞬間にまた強い咳が出た。会社のロビーには多くの人がいるため、無理やり押しころしたせいで喉がずきずきと痛んだ。
対応を終えた陽奈が心配そうな目をこちらに向けてきた。
「……先輩、大丈夫ですか? 咳、どんどん酷くなってません?」
「……うん、ごめんね。何でだろう? 体調は全然悪くないのに」
陽奈に話しながら、成美はもっと早めに病院に行くべきだったと後悔していた。そのうち治るだろうと思っていたが、予想以上に長く続いているし、連日の咳のせいで脇腹も痛みを訴え始めている。
何とか仕事を終えた成美だったが、家に帰っても頭がぼーっとしており食事を作る気力は湧いてこなかった。
正弘には食べたいものを買ってきてくれとだけ伝えてベッドで横になった。しばらくして正弘が帰宅してきたのが音で分かった。何か言われるかもと思ったが正弘が部屋に来て声をかけてくることはなかった。
結局、この日は咳が止まらず満足に睡眠も取ることができなかった。さすがにこの状態はまずいと思った成美は、翌日、午前休を取って病院に向かうことにした。正弘にも一応伝えようかと思ったが、どうせ嫌な返事しか来ないと思って黙っておくことにした。
●原因不明の咳に苦しむ成美だったが、夫の正弘は「うつさないでくれ」と冷たい態度。職場でも咳は悪化し、ついに限界を迎えた成美は病院へ向かう決意をする。診察で明かされた咳の意外な正体とは…… 後編【妻の咳を「うつすな」と冷酷に突き放した夫の末路…妻からの浴びせられた容赦ない言葉とは】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
