「外国人オーナー」の物件に住む会社員

日高隆仁(仮名、36歳)は都内のアパレルメーカーに勤務する会社員。大学卒業以来、かれこれ10年以上、同じ練馬区のマンションで一人暮らしをしている。

今住んでいる部屋は駅からそんなに遠くなく、家賃も手ごろで気に入っていた。

しかも、前のオーナーは家賃を積極的に上げない方針で、いまでは相場よりかなり割安になっていた。ただ、さすがに今度の更新で家賃が値上げされるだろうと、隆仁も予想していた。

と、そんなある日、仕事から帰宅した隆仁がポストを見ると、管理会社からの手紙が届いていた……。

 

「ようやく更新の通知が来たのか……」

隆仁はほっとひと安心する思いだった。

3月末で賃貸契約が切れるというのに、2月に入ってもなかなか「更新のお知らせ」が届かなかった。ちょうど年度末で仕事が忙しい時期で、なんとなくそのままにしていたが、隆仁もたまに思い出しては、契約更新のことを心配することがあった。だから、ちゃんと更新の通知が届いているのを見て、少し安心したのだった。

「オーナーが変わってから、こういう連絡が雑になった気がするなあ……」

隆仁は内心そう思っていた。

オーナーが変わり、管理会社も変更になる。そんな通知があったのは、約1年ほど前のことだった。

新しいオーナーは外国人だという。

「日本にも外国人がどんどん増えているし、オーナーが外国人でももはや驚くようなことじゃなくなったな……」

隆仁の仕事関係者にも外国の人が増えてきているので、特に偏見はなかった。

ただ、オーナー変更後のマンションの管理体制についは少々気になっていた。

「なんとなく、マンションの掃除なんかもちょっと雑になった気がするよな……」

新オーナーの方針なのか、それとも、新しい管理会社が手を抜いているのか、ちょうどオーナーが変わったころから、マンションの敷地にゴミが落ちていることが増えた。

「空室も増えたようだし……」

割安な物件でかつては空き部屋が出るとすぐ埋まっていたが、最近は空室が4か月以上も放置されているのが珍しくなくなっていた。気のせいか外国人の住人も増えたようだ。

「そろそろ俺も引っ越し時かな……」隆仁はなんとなくそんな風にも考えていた。

管理会社から「更新の通知」が届いたのは、そう思っていた矢先の出来事だった。