人事施策における優先順位は、転職者と企業の間でギャップあり

人事施策に関する興味深い調査をご紹介します。まず『転職活動における行動特性調査』(マイナビ社)です。転職者に「中長期的キャリアプランを検討する上で勤め先に望む人事施策」を尋ねたところ、1位が週休3日制、2位が家族・住宅手当、3位が退職金制度という結果でした。一般的に従業員はキャリアアップや報酬アップに関心が高い印象がありますが、転職経験者にとって退職金は欠かせない基本機能との認識があるようです。

もう1つは『2025年度人事・退職給付一体サーベイ調査』(三菱UFJ信託銀行、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)です。非上場企業を含む600社に「福利厚生関連制度・施策の導入状況」を尋ねた結果、導入制度の上位に挙がったのは子育て・介護支援と健康管理支援で、資産形成支援は57.5%と中位にとどまりました。人事施策は広範囲に目を配る必要があり、資産形成支援の優先度が下がる状況も理解できます。しかし、対象者が全従業員であることや転職者のニーズの高さを考慮すれば、導入・拡充の優先順位を上げる余地がありそうです。

今、再評価すべき多機能型制度としてのDC

昨今、企業が給付額の責任を持つDB・退職一時金は縮小方向にあり、代わって個人が自己責任で運用を行うDCの比重が高まっています。公的年金の縮小傾向や老齢期の長期化も進む中、個人による資産形成の重要性はかつてないほど増しています。

こうした状況を背景に、今後は従業員の資産形成支援制度や制度活用支援に対する関心もますます高まっていくでしょう。企業はそのニーズに誠実に応えることが求められます。

ここで受け皿として最もフィットするのが、個人の資産形成と制度活用支援の機能を併せ持つDCです。過去には企業側のメリットが主導してきたDCですが、今日では投資の実践と教育機能を併せ持ち、ポータビリティ機能も備えた従業員メリットの大きい制度と捉えることができます。今こそ多機能型の制度としてDCを再評価し、仕組みを積極的に活用していくべきなのです。