病院で待っていた悟志の姿

病院に着いた理子が病室に向かうと悟志は足を吊られた状態で寝ていた。

「何があったの……⁉」

理子が聞くと悟志は申し訳なさそうに説明をした。

「ランニングをしてる最中に転んじゃってさ。複雑骨折しちゃったんだ」

「複雑骨折……!」

「医者が言うには本番用のレーシングシューズを履いててそれで足首に負担がかかってしまったのが原因でもあるって言ってたんだ。レーシングシューズは横ブレに弱いらしくて、グネりやすいみたいなんだ。実際にそれで転んで足首をやっちゃったから」

理子は悟志に問い詰める。

「なんでそんな靴を履いてたのよ? いつものジョギング用は何で履かなかったの?」

「せっかく長時間走れるから本番を想定してタイムを計りたかったんだ」

「なにそれ……!」

理子は呆れて頭を抱えた。

「高い目標を追いかけるのはいいけど、足下をおろそかにしてどうするのよ? 自分の分相応なやり方ってもんがあるでしょ? 頑張るのは素敵なことだと思うけど、それで体を壊したら全部台無しよ」

「……ごめん」

悟志は大きく息を吐き出した。

「正直、走るのが楽しくなってたのもあるけど目標に向かって頑張ってる自分に酔ってたところがあったんだと思う。調子に乗ってたんだろうな。俺、理子にも嫌なことも言っちゃってたし……」

悟志はどうやら怪我をしたことで、立ち止まり、自分の言動を省みることができたらしい。でも怪我をするまで止まれないってどうなんだ。理子はそんなことを考えながらため息をついた。

「……そうね。あのままだと本当に嫌な奴になっちゃってたかも。でもこれで反省してくれたなら良い機会になったわ」

「……いろいろとごめん」

「今度から無理しすぎない程度にやってよね?」

理子の言葉に悟志は目を見開く。

「……え? まだランニングは続けて良いの?」

「……まあ明らかに楽しそうにしてたし健康にいいのは事実だから。やり過ぎないって約束はしてほしいけど」

「あ、ありがとう……。約束するよ。俺だってもうこんな痛い思いはこりごりだから」

悟志の言葉に理子は安心して頷いた。そしてもしリハビリを終えたら今度こそ一緒にランニングを始められるかもと思った。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。