帰ってこない夫に不安を覚えて

それからも悟志はランニングにのめり込み、スマートウォッチを買って走行記録を取りだしていた。平日も毎日走っているし、休日は長時間走れるとあって朝の8時から家を出て3時間ほど帰ってこない。

理子から見ても、悟志のランニングは趣味の域をとっくに超えていた。もちろん夫婦2人で過ごす時間も減っている。もしこの状態が続けばそれはとても寂しいことだなと理子は感じていた。

理子は昼食を作り始めることにした。悟志の好物であるオムライスを作ったが、11時を過ぎても、12時になっても、悟志は帰ってこない。

さすがに遅いと思い理子は悟志に電話をかけた。イヤホンをして音楽を聴きながら走っているので、悟志が電話に気づかないということはない。しかし何コール待っても悟志は電話に出なかった。

何かトラブルに巻き込まれたのではないか――。理子の胸中に嫌な想像が湧き上がった。

 

理子は完成したオムライスにラップをして冷蔵庫に入れて家を出た。2月終わりの風は異様に冷たい。冬でも脱水症状や熱中症は起こるというのをニュースで見たことがあった。もしかしたら倒れているかもしれないと思い、理子は悟志のランニングコースを歩いて回った。

悟志の姿を探しながらしばらく歩いていると電話が鳴った。画面を見るとそこには悟志の名前が表示されていた。安堵と共に怒りがこみ上げてきて理子は電話に出る。

「もう何やってんの……⁉ ずっと帰ってこないから心配したじゃない……!」

「……ごめんな。実は今病院なんだ」

悟志の言葉に理子は驚き言葉を失った。