暗号資産:半減期アノマリー覆すシナリオは? 

2025年のビットコインの値動きは4月にかけて価格が下落した後に持ち直し、10月には史上最高値を更新したが、以降は株式市場が高値圏を維持する中で先行して大きく下落する展開となった。この背景には2つの要因があると暗号資産アナリストの松嶋真倫氏はいう。1つはトランプ政権誕生後に期待された政策に陰りが見え始めたこと。もう1つはAI・半導体ブームが注目を集める中でビットコイン投資の相対的魅力が薄れたことだという。

相場がさえない反面で、制度面ではトランプ大統領令によりSEC(米証券取引委員会)、CFTC(米商品先物取引委員会)の規制整備が本格化し、ステーブルコイン関連法が成立。ただし新興のステーブルコインが約300種類も乱立したり、世界中で企業によるビットコイン購入が増え、上場企業で200社ほどにも上ることから財務リスクも懸念されている状況にある。

一方で日本では、金融庁を中心に暗号資産を従来の決済手段としての扱いに基づく資金決済法での規制から金融商品取引法(金商法)の対象として移行を進める動きが出ている。これに伴って総合課税から申告分離課税への移行も進む見込みだ。

「2026年のビットコイン相場については半減期アノマリー※に従えば下げる可能性が高い」と松嶋氏。ただ、3つの理由からそうとは限らないとみているという。1つ目には米国の利下げが年前半は継続すると見られること。各国の財政懸念が意識される中で供給量が限られたビットコインの価値が高まりやすいとみる。2つ目には大手金融機関が暗号資産関連のサービスを具体的に開始する年になることだ。「2025年は土台を作る年だったが、2026年は具体的にサービスが普及する年になり、ETFだけでなく多様な金融機関を通じて新しい投資家が参入することでビットコインに再び資金が戻るだろう」(松嶋氏)。

3つ目が個人以外の機関投資家層による需要の拡大だ。ETFや企業などの中長期主体の保有が年々増加している上、政府によるビットコインの保有も徐々に広がりつつある。チェコの中央銀行など米国以外の国でも保有の動きが出ている。この動きに対し松嶋氏は、「中央銀行が金を買うような長期的なトレンドとして続く」との見方を示す。

※半減期アノマリー…ビットコインのマイニング(採掘)報酬が半分になる「半減期」を起点とした価格変動の経験則のこと

リスク要因としては、インフレ再燃やAI・半導体ブームの調整などが挙げられる。一方でAI関連銘柄の調整はむしろビットコインへの資金流入につながる可能性もあるとも指摘する。2026年のビットコイン価格の予想レンジとしては、中立シナリオで〜14万ドル、強気シナリオで~20万ドル、弱気シナリオで~7.5万ドルと予想している。