貯蓄の習慣はあまりないが、借金のシステムはあった?
江戸っ子気質をよく、「宵越しの金は持たない」といいます。稼いだお金はその日のうちに使い切ってしまうような感覚をあらわした言葉ですが、私たちの感覚からすれば恐ろしい話です。
当時の庶民生活ではほとんど貯蓄の習慣がなかったといわれます。これは現代のような銀行がまだ存在しなかったからです。
一方で「講」「無尽」のような形で、ちょっとずつお金を出し合い、困った人を助ける仕掛けはありました。江戸時代に流行した「富士講」などは、ちょっとずつお金を貯めて一生に一度は富士山に行く夢を実現するような仕組みで、いわば旅行目的に積立貯金をするような感じです。
貯金がなかった一方で、借金はありました。町人の生活では「掛け払い」といってツケを利用した買い物が可能でした。今でいえば、クレジットカードの「ボーナス払い」のような感じでしょうか。
「掛け払い」では盆暮れに取り立てがあって、貸しがある商人などは年末に代金回収に駆けずり回り、町人は逃げ回る姿が当時の風物詩だったようです。落語にもあるそうです。
といっても、逃げ回ったところで、ツケは半年後にはさらにふくらむわけですから、あまりいいことはなさそうですね。
現代とは異なるウェルビーイングがあった
今の会社員生活と江戸時代の町人暮らし、どちらの方がウェルビーイングが高そうに感じますか。
現代より江戸時代の方がよかった、と断言はできませんが、少なくとも当時の方が気楽であった分、ウェルビーイングも高かったのかもしれません。
江戸時代は戦乱の世の中が終了し、生命の危険が大きく減りました。徐々に日常の生活の楽しみを庶民が増やしていった時代です。『べらぼう』の時代であれば浮世絵や戯作を楽しんだり、歌舞伎や人形浄瑠璃などの観劇、相撲の興行などを楽しむようになります。今の「推し活」のベースといえるかもしれません。
私たちがクリスマスやハロウィーンを楽しむように季節のイベントも楽しみました。桜の季節に花見をしたり、夏に潮干狩り、秋は観月のように季節ごとの風物詩を楽しむのも数少ない娯楽として庶民に喜ばれました。
食も、醤油や砂糖、みりんの普及が江戸時代に進んだことで一気に深みが広がりました。お鮨、立ち食いそば、鰻を楽しむようになったのもこの時代です。
おそらく、江戸時代の町人は、日々の仕事に励んだあとは、のんびりと生活を楽しんでいたのでしょう。お金も貯めることより、今を気持ちよく暮らすために使うイメージだったと思われます。
「精一杯がんばったら、移りゆく日々を楽しむ」という視点は江戸時代に学べることが多いかもしれません。
