町人の生活は、今とお金の流れが大違い

町人の生活は、今の感覚とお金の流れがまったく異なります。

もっとも大きな出費は「食費」です。現代でも会社員世帯で消費支出の4分の1くらいは食費に回っていますが、江戸時代の家計を調査した資料をみると、「米代」だけでおおむね家計の4分の1、「塩・味噌・醤油・薪炭代」を加えると家計の3分の2くらいが食費関連で飛んで行くのです。仕事で稼いだお金のほとんどが食費というわけです。

逆にびっくりするのは「住居費」で、こちらは1割くらいにしかなりません。現代だと家賃や住宅ローンの返済費用は家計の3割くらいということが多く、大きな負担となっています。しばしば3割を上回ることもあり、1割ですむとなればかなり激安です。

といっても、当時の江戸長屋は狭く、一般的な間取りが三間(さんげん:約5.5m)×九尺(きゅうしゃく:約2.7m)ですから、現代のワンルームマンションより狭い感覚でしょうか。子どもがいる場合も基本的には一部屋だけです。壁は薄く、トイレは共同、風呂はなく銭湯利用ですから、この点でも今と大違いです。

火事が多かったことも江戸暮らしの悩みで、しばしば長屋が焼失することがあったようです。ところが火事の多さと狭い部屋は、モノをあまり持たない生活を標準とすることにもつながっていました。

町人は最低限の日用品くらいしか持っていなかったようで、火事があればさっと抱えて出かけられた、とも言われます。今で言えばミニマリスト(最小限度のモノだけを持つ生活をする人たち)が普通だったというわけです。