造船は国策テーマに、米国とも協力 中国と韓国の牙城を崩せるか
続いて造船業の国策化です。国内や米国で造船を再生させる動きがあり、三井E&Sには追い風が期待されています。
日本はかつて造船で世界首位でした。しかし、中国勢や韓国勢が台頭し、現在は3位です。背景には保護主義的な政策があり、中国や韓国は自国の造船業へ巨額な支援を実施してきました(出所:経済産業省)。潤沢な支援を受ける中国勢や韓国勢を前に、日本の造船業は衰退します。建造能力も低下しており、国内の船主も発注の4~5割を中国や韓国に依存する状況です(出所:国土交通省)。
この状況の打開のため、国は支援の強化に乗り出します。「海事産業強化法」を制定し、国内の造船および海運をバックアップします。25年11月には、造船業再生基金として1200億円を盛り込んだ25年度補正予算案を閣議決定しました。また、国土交通省は26年度予算要求額のうち9640億円を海事分野の強化に設定しています。これは前年度の予算比1.2倍となる水準です。
支援には米国とも手を組みます。日本と米国は25年10月、建造能力拡大といった造船分野で協力することで合意しました。米国は、同年1月に中国の造船などにおける不公正な支援を指摘したほか、4月には米国の海事産業の再建を指示する大統領令を発令するなど、中国への対抗姿勢を強めています。
日米の海事産業の復活は三井E&Sに好機です。中韓に流れる日本船主の発注は国内への回帰が予想されます。また同社は米国に完全子会社として港湾クレーンを手掛けるパセコを持っており、受注の拡大が期待されるところです。
三井E&Sは、投資を増やしチャンスをつかむ算段です。28年3月期までの3年間で事業の成長と開発に560億円を投資する計画で、船舶燃料の重油からの転換を見込み二元燃料エンジンを強化します。また25年5月から保有を開始したクレーン輸送船を活用し、クレーンの米国や東南アジアへの展開も加速させる方針です。これらを背景に、売り上げは28年3月期に3800億円までの回復を目指します。
【主な財務目標(~28年3月期)】
・売上高:3800億円(25年3月期実績:3151億円)
・営業利益率:7.4%(同7.3%)
・配当性向:25%(同5.2%)
出所:三井E&S 中期経営計画
