上場維持ならどうなる? 医薬品の「戦略的選択肢」視野にROE30%へ

非公開化を排除しない一方で、太陽ホールディングスは上場の維持を前提とした経営計画も公表しています。これは医療・医薬品事業も含め、同社単独での成長を目指す計画です。

計画ではROE(自己資本利益率)を31年3月期までに30%へ引き上げる目標が示されました。これは25年3月期の10.6%から2.7倍以上に拡大する計算です。同時に設定した営業利益の目標は同2.1倍であることから、株主還元を通じた自己資本の圧縮策の実施が想定されます。

【主な財務目標(~31年3月期)】

・売上高:1800億円(25年3月期実績:1190億円)
・営業利益:470億円(同220億円)
・EBITDA:580億円(同317億円)
・ROE:30%(同10.6%)
※EBITDA…利払い前、税引前、減価償却および償却前利益
※ROE…自己資本利益率

出所:太陽ホールディングス 中期経営計画

カギとなるのは、やはり医療・医薬品事業です。製造受託・製造販売のROIC(投下資本利益率)はそれぞれ4.1%と0.1%であり、いずれも全社ベースの資本コスト(7~9%)を下回る状況です(25年3月期)。ROEを大きく引き上げるなら、医療・医薬品事業の利益成長が急務です。

相対的に利益率の高い製造受託は、基調的な成長で利益が資本コストを上回る想定です。受注や交渉の状況から売り上げは着実に伸長する見通しで、同時に費用の抑制に取り組み利益の拡大へつなげます。

一方、製造販売は抜本的な改革の対象です。これまで多額の減損を実施してきたことから、今後は償却費が軽くなることが見込まれます。この状況から、製造原価の削減も実施し、利益の拡大を目指します。また在庫水準の適正化を図り、投下資本の圧縮も図ります。

ただし、医薬品の製造販売においては「戦略的選択肢」の検討にも言及しています。具体的な明示はありませんが、これまでの経緯から事業の撤退も視野に入れている可能性があります。

なお、主力のエレクトロニクス事業は好調が続く想定です。市場の成長見通しはプリント配線板が年率6%、半導体パッケージ基板が同9%と、高い成長を見込みます。期間中の営業利益の年平均成長率は医療・医薬品事業が28.5%増、エレクトロニクス事業が10.5%増の計画です。

これに加え、株主還元の強化で自己資本を圧縮し、ROEの改善を助けます。期間中の営業キャッシュフローは、設備投資および既存方針による株主還元(DOE(※)5%以上、総還元性向100%)を超過する計画であり、余剰分は追加の株主還元に充当します。当面(少なくとも28年3月期まで)は既存方針に基づき、以降は追加的な株主還元を実施する方針です。さらにM&Aといった戦略投資を行う場合は外部借り入れの活用し、資本の膨張を防ぐことも検討します。

※DOE…株主資本配当率