筆頭株主が経営陣に「ノー」 今後は非公開化が焦点に

まずは太陽ホールディングスの概要を押さえましょう。

太陽ホールディングスは大手の化学メーカーです。プリント基板の回路パターンの保護に用いる絶縁材(ソルダーレジスト)で世界的なシェアを握ります。付加価値の高い機能材が中心であり、営業利益率は18.5%と、プライム化学86社(同9.58%)を大幅に上回る好採算が強みです(25年3月期)。

太陽ホールディングスの業績(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:太陽ホールディングス 決算短信より著者作成
 

好業績を残しながらも、太陽ホールディングスは先述のとおり代表取締役の再任が否決されるに至りました。背景にはアクティビスト(物言う株主)として知られるオアシス・マネジメントの存在があります。オアシスは代表取締役の解任を求めていました。

焦点の1つとなったのが医療・医薬品事業です。2018年から本格的に開始したもので、主に長期収載品(後発品が上市された先発品)の製造受託および製造販売を手掛けます。しかし、太陽ホールディングスはソルダーレジストなどのエレクトロニクス事業が中心で、医療・医薬品事業の貢献は小規模です。オアシスは、代表取締役の解任を求めた理由の1つに医療・医薬品事業の低い資本効率を挙げています。

太陽ホールディングスのセグメント業績(2018年3月期~2025年3月期)
 
出所:太陽ホールディングス 決算短信より著者作成
 

もっとも、アクティビストの株主提案は否決されることが一般的です。しかし、太陽ホールディングスのケースでは、会社側が提示した代表取締役の再任案が否決され、結果的にオアシスの主張が一部認められることとなりました(オアシスが提案した議案そのものは否決)。

解任劇の決め手になったのが筆頭株主のDIC(旧・大日本インキ化学工業)です。DICは、太陽ホールディングスが非公開化の提案を受けながらも、その対応に消極的だったと主張し、代表取締役の再任に反対票を投じました。太陽ホールディングスは未公開株ファンドから買収提案を受けていることを認めており、報道では米投資ファンドのKKRや日本産業推進機構などが非公開化を目指していると伝えられています。

結局、代表取締役の再任への賛成率は46.09%にとどまり、代表取締役であった佐藤英志氏は取締役会から外れます。一連の経緯を受けて太陽ホールディングスが設置した特別委員会は25年11月、現経営陣の下で目標達成を目指すことが望ましいとしながら、非公開化の提案を受けた場合は積極的な検討が求められるとする最終報告を発表しました。太陽ホールディングスはこの提言を踏まえ、非公開化の判断を含む資本政策の方針を25年度中に公表する見通しです。

非公開化となれば、株式は市場価格より高い価格での買い占めが進められる可能性があります。この思惑から、太陽ホールディングスの株価は急騰しているものと考えられます。